こんにちは映画ファン宮川(@miyakawa2449)です。
「SFの父」と言われるH.G.ウェルズが1898年公開した原作を元にした映画「宇宙戦争(原題:WAR OF THE WORLD)」を観ました(原作も映画と同じ邦題と原題です)。
スティーブン・スピルバーグ監督が2005年に公開し、トム・クルーズが主演した作品です(1953年に同じタイトルでバイロン・ハスキン監督により1度映画化されています)。
スティーブン・スピルバーグ監督のこの作品の分類は「SF/パニック映画(またはSF/スリラー映画)」ですが、家族愛の物語でもあります。
邦題の「宇宙戦争」のタイトル通りに「STAR WARS」や「インデペンデンス・デイ」のような、宇宙人対人間の激しく戦闘を繰り広げる映画をイメージしてはいけません。
この映画はエイリアンが地球に殺人マシーンを仕込み人類を襲います。そして、逃げ惑う人類のパニックを見せる作品であり、主人公であるレイ(トム・クルーズ)をはじめとして人類はエイリアンから生き残る手立てを模索します。
殺人マシンに為す術がない人類が安住の地を求めて右往左往する姿を映像化しています。
主演はトム・クルーズですが、残念ながら戦闘機に乗らないし、スパイ活動もしません。
トム・クルーズが演じるレイは、離婚して別々に暮らしている子どもたちを2日だけ預かることになりますが、子どもたちとの関係は良好とは言えず信頼関係も今ひとつパッとしていません。
それでもレイは命をかけて子どもを守ります。
2001年の9.11を意識した作品であるという点から娯楽作品というよりはテロリズムへの対処を考えさせる、家族愛と絆を問う社会派風のSF/パニック映画です。
西村書店「スピルバーグ その世界と人生」より。
スピルバーグの言葉を引用「『宇宙戦争」の大部分はテロリズムに対するぼくたちの反応なんだ」とスピルバーグは言う。
「本当の群集心理とはどんなものなのか。集団恐慌こそ人間という危険動物の正体なんだ。
もし社会が、他人をさしおいて我先に生きのびようとする無頼の徒と化してしまったら、ぼくたちはどうするだろう。」
さらにこうも付け加えている。
「ぼくたちはいわば安全で快適な揺りかごの中で生活しているから──南北戦争以来、アメリカは本土で紛争に苦しんだことがない──テロリズムはアメリカ人の真理にとって異質(エイリアン)なものなんだ。
そんなぼくたちはテロリズムをいかに考え、対処していけばいいのだろう。」
それでは映画「宇宙戦争」を紹介します。
映画「宇宙戦争」簡単な紹介
引用元 : 宇宙戦争 スペシャル・コレクターズ・エディション | パラマウントピクチャーズ
H・G・ウェルズの古典的SFスリラーの現代バージョンである本作は、人類の未来を懸けたケタはずれの闘いを、あるアメリカ人家族の目を通して描く。
行く手にある物全てを殲滅する異星人の殺人マシーン“トライポッド”の大群から逃れ、家族と共に安全な場所への逃避行を試みるレイ・フェリアー。
「宇宙戦争」は壮大な特殊効果に彩られた、アクション満載のアドベンチャーだ!
映画「宇宙戦争」のあらすじ
20世紀初頭、磁気嵐が世界各地を襲い、落雷が同じ場所に繰り返し落ちる現象が発生した。
世界規模の広範囲で。
そして、いくばくかの時間がすぎたとき地下から突如、謎の殺人マシーンが登場する。
殺人マシーンの射程距離にいる人間は次々と閃光を浴びせられ灰と化して、跡形もなくなっていく。
現場にいたレイ・フェリエはパニックになりながらも、自宅に戻り子どもたちの安全を優先するために「逃げる」ことを選択した。
町中はパニック、磁気嵐の影響で町中の車や電気製品が動かなくなっていた中、修理されたばかりの車を奪い逃げ出すレイと子どもたち。
道路を車で走り続けるレイたちだが、街を離れてどれだけ走っても道路上には混乱に戸惑う人々の姿が続く。
果たして旅のいく先に平和は訪れるのか?
SF/パニック映画でありながら、父親の役割、家族の絆の大切さを問う社会派映画である。
映画「宇宙戦争」の基本情報
ジャンル | SF/パニック映画 |
原題 | WAR OF THE WORLDS |
邦題 | 宇宙戦争 |
監督 | Steven Spielberg(スティーブン・スピルバーグ) |
脚本 | Josh Friedman(ジョシュ・フリードマン) David Koepp(デヴィッド・コープ) |
原作 | H. G. Wells「WAR OF THE WORLDS(宇宙戦争)」1898年公開。 |
製作 | Kathleen Kennedy(キャスリーン・ケネディ) Colin Wilson(コリン・ウィルソン) |
出演者 | Tom Cruise(トム・クルーズ) Dakota Fanning(ダコタ・ファニング) Justin Chatwin(ジャスティン・チャットウィン) |
音楽 | John Williams(ジョン・ウィリアムズ ) 未知との遭遇、E.T、A.I.、マイノリティー。リポート、ハリソン・フォードシリーズなどはもちろん、ハリー・ポッターシリーズ、スター・ウォーズシリーズも担当 |
コピーライト | Copyright (C)2005 by Paramount Pictures and DreamWorks LLC. All Rights Reserved. TM,(R) & Copyright (C) 2005 by Paramount Pictures. All Rights Reserved. |
配給会社 | パラマウント映画 ユナイテッド・インターナショナル・ピクチャーズ |
公開年 | 2005年 |
上映時間 | 116分 |
映画「宇宙戦争」の感想・レビュー
古典SFが原作のため、「宇宙戦争」というタイトルがちょっと残念な雰囲気を醸し出しているが、映画はしっかりしています。
スティーブン・スピルバーグ監督は言っています。
西村書店「スピルバーグ その世界と人生」より
『宇宙戦争』を家族向け映画には決してしなかった。
『宇宙戦争』は9.11(2001)以後の、世界の執圧を過酷に描いた黙示録なんだ
これはレイを中心とした家族の物語です。
侵略されたアメリカ、襲われる人々、世界を制圧する刺客になすすべなく逃げ惑う人間と、壊滅されていくアメリカ軍。
確かに、悲惨な描写が数多く描かれるため、ある意味「家族向け」映画ではないでしょう。
ポップコーンを両手に抱えて笑いながら見る「ファミリー映画」でもありません。
しかし、ポップコーンを脇に置いて「家族の絆」「平和の尊さ」「テロや戦争の悲惨さ」を伝える映画としては素晴らしい仕上がりになっていると思います。
肩に力が入るタイプの作品です。
特に「レイ」を中心とした彼ら家族がバラバラな状態から1つにまとまっていくまでの2時間の物語は見応えがあります。
トム・クルーズは離婚して1人暮らししており、年頃の長男ロビーと妹のレイチェルを数日預かることに。ロビーと元妻からの信頼はゼロ。下の女の子レイチェルは素直そうだが、母親のような口調で注意をしてくることに辟易(へきえき)するレイ。
絆を感じられないバラバラな3人レイ、ロビー、レイチェルの命を掛けた旅が始まるのです。
「生き延びる」という共通の目的のために彼らには協調性が必要になってくるわけですが、3人がそれぞれマイペースで協調性が見受けられない。
ダメな父親像丸出しのレイはこの逃避行の中で家族を守りきるために頑張ってくれました。
他の映画のスマートなトム・クルーズとは違う一面が観れて面白かったです。
スピルバーグが言う通り「家族向け」映画ではないかもしれないが、「家族をテーマ」にしている作品として観るとしっくりくる映画でした。
映画「宇宙戦争」をキャストで振り返る
Ray Ferrier(レイ・フェリエ)/Tom Cruise(トム・クルーズ)
湾岸で働く作業員のレイ・フェリエ(トム・クルーズ)。
離婚しており一人暮らしだが、この日はたまたま子どもたち2人ロビーとレイチェルが遊びにくる日だった。
遊びに来る子どもたちに父親らしい愛情表現を見せようとするが、子どもたちはそれを期待しておらずすれ違いばかり。
殺人マシーンから逃れるために旅をするレイたちだが、レイたちを襲うのは殺人マシーンだけではなかった。
ミッション:インポッシブルの諜報員イメージが強いトム・クルーズが、出来損ないの父親を演じ、それでも父親然として奮闘する姿がかっこいい。1つの役のイメージがついてしまって、どの役を演じても同じ顔に見える俳優が時折いるが、トム・クルーズは大丈夫。
苦悩するトム・クルーズを堪能してください。
- Tom Cruise(トム・クルーズ)
- 生年月日 1962年7月3日
- 出生地 アメリカ合衆国 ニューヨーク州シラキュース
- 主な映画出演作品
- Mission: Impossible – Fallout(ミッション:インポッシブル フォールアウト・2018)/主演 イーサン・ハント 役
- Mission: Impossible – Rogue Nation(ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション・2015)/主演 イーサン・ハント
- Edge of Tomorrow(オール・ユー・ニード・イズ・キル・2014)/主演 ウィリアム・ケイジ 役(宇宙人と戦います)
- Minority Report(マイノリティ・リポート・2002)/主演 ジョン・アンダートン 役(スティーブン・スピルバーグ監督作品)
- 備考
ミッション:インポッシブル シリーズは上記で紹介した2作以外、1996年からの全シリーズ全6作品に出演。
宇宙戦争、マイノリティ・リポートでスティーブン・スピルバーグ監督作品に出演している。
Rachel Ferrier(レイチェル・フェリエ)/Dakota Fanning(ダコタ・ファニング)
10歳前後のレイの娘のレイチェル。
レイのことをパパと呼んでくれているが、手を握ったり体を触られるのを極端に嫌う。
何かが起きると直ぐにパニックに陥る印象的が強いが、短いながらも父との逃避行の間に成長していく片鱗が見え隠れする。
ダコタ・ファニングの子どもながらの芝居が魅力的だった。
「悲鳴がうるさい」という意見も聞くが、戦争やテロ(エイリアン)に襲われた10代の子どもが見せる1つのモデルとして考えるべき作品だと思う。
ダコタ・ファニングは昨年公開された「オーシャンズ8」では「ペネロペ・スターン役」として、ちらっと出演しているので探してみてはいかがだろうか。
Robbie(ロビー)/Justin Chatwin(ジャスティン・チャットウィン)
思春期真っ只中で正義感丸出しのロビー。
父親のレイに対して「レイ」と呼び捨てする態度で、あからさまに父親を嫌っている。
パニックを起こす妹レイチェルをなだめたりと兄として頼り甲斐がある一面がある一方で、強い正義感が裏目に出ることも。
2009年に公開されたハリウッド版の「DRAGON BALL EVOLUTION(ドラゴン・ボール エボリューション)」主演で孫悟空を演じています。
映画「宇宙戦争」気になる小ネタ
スティーブン・スピルバーグ監督が親日家という話は有名ですが、宇宙戦争にもその色が濃く出ています。
作中に出てきた言葉、または映像に次の物を探してみてください。
「ヒロシマ」「オオサカ」「日本」「テレビ朝日」「セーラームーン」などです。
先の3つは地名として紹介されるのでわかりやすいですが、後の2つは映像として映るので気がつかないかもしれません。
映画の本筋にはあまり大きい影響はないので、聞き逃したり、見落としたりしても問題はありません。
ただ、「オオサカ」は頑張っているのでぜひ、発見してください。
映画「宇宙戦争」ちょこっとネタバレ
軽い紹介なので映画の伏線には触れないシーンの紹介です。
謎の殺人兵器が人類を襲い、為す術がない人たちは集団となって安全な土地を目指してひたすら歩きます。
殺人兵器というのはいわれのない無秩序な暴力であり、現代社会で言えばテロや戦争による無差別な攻撃をさします。
無差別な攻撃に慣れてしまった人間たちの集団心理として、略奪や現実逃避が挙げられます。
映画の中で印象に残ったシーンの一つに、集団が歩く先の踏切が降りた時に燃え盛る列車が通り過ぎる映像があります。
このとき集団は騒ぐわけでもなく、ありのままを受け入れて、列車が通り過ぎるのを見守っています。
そして、列車が通り過ぎた後また黙々と目的地を目指して歩き始めます、何事もなかったかのように。
「ありのままを受け入れて」と書きましたが、もしくは「諦めて」いたのかもしれません。
安全な場所はないのかもしれないと分かっていて。
とても、印象的なシーンでした。
テロや戦争が日常化すると「誰もがこうなる」という例えの1シーンです。
最後に
宇宙人と戦う映画ではなく、力なきただの父親が懸命に子どもたちを守り続けて安全な場所を目指して旅する映画です。
その映画の中で彼らを襲うのは殺人マシーンであったり、様々なトラブルです。
長男のロビーは緊急時のこのときに正義感に目覚めアメリカ軍と行動を共にしようとしてレイと妹のレイチェルを困らせ、レイチェルはレイチェルでパニックを起こしやすくレイたちを困らせます。
テロや戦争の恐ろしさと、襲われた人間たちの集団心理の恐ろしさをこれでもかと見せつけられる作品です。
1989年のSF小説を見事に現代版にアレンジしたスティーブン・スピルバーグ監督と製作陣と脚本家、そして、レイを見事に演じたトム・クルーズ。そして、天才子役としてダコタ・ファニングには脱帽しました。
以上、『映画「宇宙戦争(2005)」H.G.ウェルズ原作、トム・クルーズ主演、スティーブン・スピルバーグ監督作品』でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
映画ファン宮川(@miyakawa2449)でした。
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参考資料「スピルバーグ その世界と人生」
このブログを書くにあたり次の本を参考にしました。
スピルバーグ その世界と人生 | リチャード シッケル, Richard Schickel, 大久保 清朗, 南波 克行 |本 | 通販 | Amazon
ジョーズ/未知との遭遇/レイダース・失われたアーク/E.T./インディ・ジョーンズ・魔宮の伝説/ジュラシック・パーク/シンドラーのリスト/ロストワールド・ジュラシック・パーク/A.I./マイノリティ・リポート/宇宙戦争/インディ・ジョーンズ・クリスタル・スカルの王国など、各映画のエピソードが満載です。
コメント
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