映画『風の電話』感想・レビュー(震災で心に傷を残した少女のロードムービー)

映画『風の電話』 ロードムービー
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映画『風の電話』は2020年1月24日(金)より全国一斉ロードショーが始まりました。

上映している映画館は少ないことが少し残念ではあります。

『風の電話』は2月に開幕する第70回ベルリン国際映画祭で出品されることが決まっています。
若者が出演する作品が対象のジェネレーション14プラス部門です。

東日本大震災で家族を亡くし、広島県の叔母の家に身を寄せる女子高生ハルをモトーラ世理奈が演じます。

西島秀俊さん、西田敏行さん、三浦友和さんら豪華俳優陣が脇を固め、監督は諏訪敦彦さんです。

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映画『風の電話』予告編

YouTube  bmstd公式アカウントより

2020年1月24日(金)全国公開
監督:諏訪敦彦
出演:モトーラ世理奈 西島秀俊 西田敏行(特別出演) 三浦友和

上記の予告編をまず観てもらいたい。

震災で傷ついた少女が旅をして、結果、生まれ故郷の岩手県大槌町まで旅をするロードムービーである。

出発地点は広島県。

監督は諏訪敦彦さんで即興映画の演出が得意な方で、台本はほとんど用意しないと言われている。

インタビュー記事や動画、パンフレットなどにも記載されているが、即興演技で俳優たちがセリフを話してるというのだから、この映画は侮れない。

しかも、俳優たちは自分の演じている役の感情も載せるのだから。

実際に映画を観てきたがこれは本当にすごい映画だった。

経験豊かな脇を固める俳優陣の演技にも舌を巻くが、大御所たちに囲まれながらも怯まず17歳の少女ハルを演じ切った主演女優のモトーラ世理奈の演技には本当に驚かされました。

旅の終盤に訪れた『風の電話』での語りのシーンも即興(事前練習はもちろんしたらしいが)で感情を表現していたというのだから本当にすごいと思いました(予告編には載っていませんが)。

映画『風の電話』あらすじ

引用元: 映画『風の電話』公式サイトより

17歳の高校生ハル(モトーラ世理奈)は、東日本大震災で家族を失い、広島に住む伯母、広子(渡辺真起子)の家に身を寄せている。

心に深い傷を抱えながらも、常に寄り添ってくれる広子のおかげで、日常を過ごすことができたハルだったが、ある日、学校から帰ると広子が部屋で倒れていた。

自分の周りの人が全ていなくなる不安に駆られたハルは、あの日以来、一度も帰っていない故郷の大槌町へ向かう。

広島から岩手までの長い旅の途中、彼女の目にはどんな景色が映っていくのだろうか―。

憔悴して道端に倒れていたところを助けてくれた公平(三浦友和)、今も福島に暮らし被災した時の話を聞かせてくれた今田(西田敏行)。

様々な人と出会い、食事をふるまわれ、抱きしめられ、「生きろ」と励まされるハル。

道中で出会った福島の元原発作業員の森尾(西島秀俊)と共に旅は続いていき…。

そして、ハルは導かれるように、故郷にある<風の電話>へと歩みを進める。家族と「もう一度、話したい」その想いを胸に―。

映画『風の電話』感想・レビュー

主人公のハルがいろいろな大人たちに助けられながら広島県から岩手県まで1300km以上の旅をする。その旅の1つ1つの出会いのエピソードが多彩で、観ている側もいろいろ考えさせられる。

ハル自身は自分の家族を津波にさらわれたわけだが、彼女が旅で出会う人たちも誰か親しい人を失っていたりする(悲しいエピソードだけではないが)。

そのときハルが何を考えていたのかはわからないが、助けてくれた大人たちに感謝の気持ちは必ずあったはずだ。
また、彼女が出会う大人たちも何かを感じたはずだ。
多くを聞く大人。
余計なことを聞かず受け止めてくれる大人。
ともに涙を流してくれる大人。
黙って助けてくれる大人。

とにかくハルはこれまでも、今回も、そしてこれから先も大勢の人に助けられながら生きていくことになるのだろう。

この映画はハルに寄り添うように物語が進んでいきます。
出てくる大人たちはみんな優しい。

人生を生きていればどこかで、死に分かれることはある。

映画のタイトルにもなっている『風の電話』という電話ボックスは実在する魔法の電話ボックスです。
岩手県大槌町に2011年に設置された電話ボックスですが、電話線はつながっていません。
『風の電話』は亡くなった人と言葉を交わすことできる場所であり、3万人以上の人が訪れています。

ハルは偶然『風の電話』を訪れることになるが、ハルが『風の電話』の中で話した一言一言が非常に重かったです。

残されたものしか、亡くなった人間を思い出してあげることができない。

本当にそうだと思います。

生き残った人間は一生懸命彼らを愛しみ、生き続けていかなくては。

映画『風の電話』基本情報

出演 モトーラ世理奈 西島秀俊 西田敏行(特別出演) 三浦友和

渡辺真起子 山本未來 占部房子 池津祥子 石橋けい 篠原篤 別府康子

監督 諏訪敦彦
脚本 諏訪敦彦
狗飼恭子
音楽 世武裕子
撮影 灰原隆裕
照明 舟橋正生
録音・整音 山本タカアキ
美術 林チチ
スタイリスト 宮本茉莉
ヘアメイク 寺沢ルミ
編集 佐藤崇
上映時間
著作権 (c) 2020 映画「風の電話」制作員会

映画『風の電話』まとめ

ハルという女の子が東日本大震災の被災で心に抱えた「わだかまり」を前に苦悩し、それでも生き続ける姿を描いている。

映画が始まったばかりの彼女には感情が無いのか?と思うぐらい口数が少なく、目が死んでいてすごく心配になりました。
その理由が震災で受けたわだかまりに決着をつけることができず悩み続けているということが、映画を見ていてわかってきます。
(ハルを演じているモトーラ世理奈さんの演技力には目を見張るものがあります)

ハルは津波で家族3人、父親、母親、弟を失い、今では叔母と2人ぐらし。

なぜ、自分だけが生き残ってしまったのか、家族はどこへいってしまったのか、自問自答を繰り返す日々に疲れ切っていたように思います。

それが叔母が倒れたことで不安になり、衝動的に飛び出してしまう。

旅の始まりは偶然で直感的だった。

『ハルは初めから大槌を目指したわけではなかった』
『いつ旅に出ることになったかはわからない』

これが公式の回答でした。

この映画は『答え』を探す映画では無い。

観客はハルを通じて共に旅をして、観客1人1人が彼女に寄り添いの心証を感じる映画だと思いました。

10人いればそこには10人のハル像があっていい。

少なくとも映画のほぼ96%といっていいほど、感情が無いハルがときどき口を聞き、自分のことを語るシーンはとても印象的でした。

彼女はずっと我慢して感情を殺していたのかもしれない。

その数少ない言葉や行動の行間から読み取ったハルが映画を観た人の心にあればいい。

人の優しさを感じ、元気になったハルから僕らも元気を受け取りたいと思う。

以上、「映画『風の電話』感想・レビュー(震災で心に傷を残した少女のロードムービー)」でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

映画『風の電話』モトーラ世理奈×諏訪敦彦監督インタビュー

YouTube クランクイン !より

映画『風の電話』
2020年1月24日公開
(C)2020映画「風の電話」製作委員会

<風の電話>を映画化 主演・モトーラ世理奈×諏訪敦彦監督が紡いだ“さすらい”の物語

諏訪敦彦監督が『風の電話』の魅力を語っています。
また、『風の電話』の電話ボックスシーンの裏話をモトーラ世理奈さんが話してくれています。

映画をまだ観ていない人はもちろんですが、観終わっている人も是非観て欲しい映像です。

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