映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』感想・解説（碇シンジの贖罪と救済、そして、涙の理由）

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が 2021年3月8日に劇場公開されましたが、前作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q（2012年11月17）』からおよそ9年の歳月が流れました。

非常に長い年月が流れました。

テレビシリーズ、旧劇場版を含めれば非常に長い歴史を持つエヴァンゲリオンシリーズもいよいよ今回で本当に最後となりました。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』予告編

株式会社カラー khara inc.official YouTube 公式チャンネルより2本紹介します。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』本予告【公式】

【公式】『現在のエヴァンゲリオン』

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』基本情報

• 企画・原作・脚本・総監督／庵野秀明
• 監督／鶴巻和哉、中山勝一、前田真宏
• コンセプトアートディレクター／前田真宏
• 総作画監督／錦織敦史
• 作画監督／井関修一、金世俊、浅野直之、田中将賀、新井浩一副監督／谷田部透湖、小松田大全
• テーマソング／「One Last Kiss」宇多田ヒカル（ソニー・ミュージックレーベルズ）
• 制作／スタジオカラー
• 配給／東宝、東映、カラー
• 宣伝／カラー、東映
• 製作／カラー
• 声の出演
  • 緒方恵美
  • 林原めぐみ
  • 宮村優子
  • 坂本真綾
  • 三石琴乃
  • 山口由里子
  • 石田彰
  • 立木文彦
  • 山寺宏一
  • 内山昴輝
  • 神木隆之介
• 上映時間／2時間35分
• ©カラー

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』感想・レビュー

無事、全てを綺麗に終わらせてくれて、「ありがとう」が最初の感想でした。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q（2012年11月17日）』で突然の路線変更、主人公 碇シンジ（緒方恵美）は14年の眠りから覚めるが、ニアサードインパクトを起こした碇シンジに周りは強く当たる。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』で碇シンジを取り巻くあらゆる環境が激変し、多くのモヤモヤを残したまま劇場を後にした記憶がありました。
映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』では『Q』で感じたあらゆるモヤモヤを全て回収し、多くの人が観たかった『エヴァンゲリオン』としてシリーズ最高の作品として昇華させてくれました。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』と『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』はこれまでのエヴァンゲリオン（テレビシーリズ、旧劇場版）とはどれとも違う新路線のストーリーでしたが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が揃ったことで完璧な作品として完成できたと思います。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』から9年、本当に長い月日でしたが、綺麗にまとめて素晴らしい作品に仕上げてくれて本当にありがとうございました。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』キャストの紹介

碇シンジ（緒方恵美）

エヴァンゲリオン初号機パイロット、碇シンジ。
NERV総司令 碇ゲンドウの息子。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』でニアサードインパクトを起こした。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』14年後に目覚めた碇シンジは自分が行ったニアサードインパクトの贖罪にもがき苦しんでいる。
同世代の渚カヲルと出会い、ともに世界を救う道を歩むが、碇ゲンドウの策略により再びフォースインパクトを起こしかける。
碇ゲンドウの策略に気づいた渚カヲルが、フォースインパクトを食い止めるために碇シンジの目の前で自爆する（それでもフォースインパクトは止まらず、マリがシンジを13号機から引きずり出すことでフォースインパクトはギリギリ止まりました）。
親友の渚カヲルを失い、何をしても元の世界に戻らないどころか、どんどん状況が悪くなっていくことに全てに絶望した碇シンジは殻に閉じこもる。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』では碇シンジの苦しみを見守ることになる。
さまざまな優しさが溢れる世界で碇シンジはそれに気づくことができるのか。

アヤナミレイ（仮称）/ 綾波レイ（林原めぐみ）

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の綾波レイと、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』のアヤナミレイ（仮称）では経験値が異なる個体である。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』で式波・アスカ・ラングレーはアヤナミレイ（仮称）を「初期ロット」と呼び、『序』『破』の綾波レイとは区別している。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』におけるアヤナミレイは自分の存在理由と己の感情の狭間の中で揺れ動く。

式波・アスカ・ラングレー（宮村優子）

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』では『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』よりストーリー上では14年経っているにもかかわらず、14年前と同じ姿で登場した。

「エヴァの呪縛」によって肉体年齢は14歳のまま止まっている。

『新劇場版:Q』フォースインパクト後、渚カヲルが亡くなり生きる気力を失った碇シンジと初期ロット（アヤナミレイ（仮称））を連れて歩き出す。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』ではガキシンジへの怒りと愛情を持ちつつも、シンジへの関心を隠そうとする。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』以降は一番仲のいいマリといても誰といても孤独な影が見え隠れする式波・アスカ・ラングレー。

真希波・マリ・イラストリアス（坂本真綾）

新劇場版 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』が初登場のキャラクター。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
仮設5号機で使徒を撃破。
その後パラシュートを用いて第3新東京市に侵入し、中学校の屋上で碇シンジと接触する。
第10の使徒襲来の際、NERVには無断でアスカのエヴァに搭乗し、使徒と戦うが敗戦する。
謎多き少女。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
アスカと同じく、エヴァの呪縛により14歳の姿のまま登場し、アスカとともにWILLEで活動する。
アスカとは友好的な関係が結ばれている。

碇シンジへの関心の高さは14年前、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の出会いの頃から変わらない。

葛城ミサト（三石琴乃）

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序）』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』では特務機関NERVの戦術作戦部の責任者。

碇シンジを信頼しており、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』のニアサードインパクト発動時、碇シンジに対して葛城ミサトは「シンジくん行きなさい、あなた自身の願いのために（綾波レイを助けにいけ）」と叫ぶシーンが印象的。

その結果、サードインパクトを引き起こしている。
しかし、14年後の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』で碇シンジが目覚めたとき「もう何もしないで」と冷たく言い放ち、シンジの前から姿を消した。

あれほどまでに信頼していた碇シンジを前に葛城ミサトを始め、旧NERVのメンバーたちだけでなくWILLEのメンバーまでも碇シンジに嫌悪感を抱いているように見える。

葛城ミサトをはじめとしたWILLEメンバーたちの碇シンジへの嫌悪感の答えが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』で明らかになる。

鈴原トウジ（関智一）

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』で碇シンジが転校した中学校の同級生、鈴原トウジ。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』で碇シンジがエヴァンゲリオンで初陣した際、使徒との戦闘に妹の鈴原サクラが巻き込まれて大怪我をする。
碇シンジがエヴァンゲリオンパイロットと知り、妹の仇としてシンジを殴る。
しかし、その後、新たな使徒との戦闘に相田ケンスケと巻き込まれて、今度は碇シンジに助けられる。
碇シンジの戦闘中の葛藤を目の当たりにした鈴原トウジは碇シンジに尊敬の念を覚えつつ、自分の行いを恥じる。
それ以降は碇シンジ、鈴原トウジ、相田ケンスケの3人は親友になる。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』では鈴原トウジは登場しなかったが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』で再び登場する。

相田ケンスケ（岩永哲哉）

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』で碇シンジが転校した中学校の同級生、相田ケンスケ。

少年の頃はサバイバルと軍事オタクで鈴原トウジの親友。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』では相田ケンスケは登場しなかったが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』で再び登場する。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』考察とまとめ

3月に上映がスタートした映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』も、一部の劇場を除いて、7月21日を境に上映が終了しました。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』でフォースインパクトを起こしかけ、心を許した渚カヲルを目の前で死なせてしまったために心を閉じた碇シンジ。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』で碇シンジは己の取った行動の結果と贖罪に苦しみ、誰とも関わろうとはせず殻にこもり続ける。

しかし、碇シンジを取り巻くみんなは各々の気持ちで碇シンジを想い、愛し、勇気づけてくれる。
あるものは距離を置き、あるものはそっと見守り、あるものは通い続ける。
みんなの想いはそこにあるのに気づけない、気づこうとしない碇シンジだったが、あるときあることに気がつく。

アヤナミレイ（仮称）の想いを知ったとき、シンジは涙を流しても人を救えないことを思い知る。
そして、次は自分が相手を思いやり、助ける番だと確信する。

映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』は碇シンジの心の救済を通じて、周りの大切な人たちを碇シンジが救済するハートフルアニメだったのだと思いました。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序・破・Q』の3部作で苦しみ続け、痛みを知るシンジだからこそ描くことができた映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』でした。
そんな碇シンジを描いたからこそ素晴らしい作品に仕上がったと思います。

また、観客は碇シンジが体験した苦しみを追体験してきたからこそ、この最新作『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』で、碇シンジと同じように救われ感動できたのではないでしょうか。

以上、「映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』感想・解説（碇シンジの贖罪と救済、そして、涙の理由）」でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。