「ファースト・マン(原題:First Man)」は人類初月面着陸し、地球に帰還したアポロ11号の船長ニール・アームストロングの伝記を原作としたヒューマンドラマです。
原作名は「First Man: The Life of Neil A. Armstrong(ファースト・マン:ニール・A・アームストロングの人生」。
原作はまだ読んでいませんが、ニール・アームストロングがNASAの試験をパスし、幾多の苦悩を繰り返すニール・アームストロングがそれでも前進し続けて、アポロ11号で月面に到達し、地球に帰還するまでを描きます。
なお、監督と主演は「ラ・ラ・ラ・ランド」で第89回アカデミー(2017年)監督賞を受賞したデミアン・チャゼル監督と、主演男優賞ノミネートのライアン・ゴズリングが今回もタッグを組んでいます。
なお、今年の第91回アカデミーでは、「ファースト・マン」は視覚効果賞を受賞しました。
おめでとうございます。
それでは映画「ファースト・マン」を紹介します。
映画「ファースト・マン」予告
映画「ファースト・マン」ユニバーサル・ピクチャーズ公式の予告編 YouTube 映像です。
映画「ファースト・マン」あらすじ
アメリカの有人宇宙飛行計画、マーキュリー計画・ジェミニ計画・アポロ計画うち、特にジェミニ計画とアポロ計画の1961年から1969年(アポロ11号)までの物語です。
ニール・アームストロングという人類として初めて月面を歩いた男。
彼を突き動かした心情とは何だったのか?
そして、米ソの冷戦時代における、アメリカの宇宙開発競争に明け暮れた姿をこの映画は観せてくれます。
全ては史実に基づいたモノであり、この映画は自伝をベースとしたドキュメンタリー映画でもあります。
映画「ファースト・マン」の公式サイトには 1961年から1969年までの年表がストーリーとして公開されています。
映画の中で起きること、歴史上実際に起きたことが載っていますので、ご覧になられてから劇場に足を向けると日本人でも分かりやすいと思いますよ。
ストーリー|映画『ファースト・マン』公式サイトはここをクリック
原題 | First Man |
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監督 | Damien Chazelle(デイミアン・チャゼル) La La Land(ラ・ラ・ランド・2016)/アカデミー監督賞受賞 |
脚本 | Josh Singer(ジョシュ・シンガー) |
原作 | James R. Hansen(ジェームズ・R・ハンセン) 「First Man: The Life of Neil A. Armstrong(ファースト・マン: ニール・アームストロングの人生)」 |
製作 | Wyck Godfrey(ウィック・ゴッドフリー) マーティ・ボーウェン アイザック・クラウスナー Damien Chazelle(デイミアン・チャゼル) |
製作総指揮 | Steven Spielberg(スティーヴン・スピルバーグ) アダム・メリムズ Josh Singer(ジョシュ・シンガー) |
出演者 | Ryan Gosling(ライアン・ゴズリング) Claire Foy(クレア・フォイ) Jason Clarke(ジェイソン・クラーク) Kyle Chandler(カイル・チャンドラー) Corey Stoll(コリー・ストール) Ciarán Hinds(キーラン・ハインズ) |
音楽 | Justin Hurwitz(ジャスティン・ハーウィッツ) La La Land(ラ・ラ・ランド・2016)/作曲 |
製作会社 | UNIVERSAL PICTURES |
配給 | アメリカ合衆国 UNIVERSAL PICTURES 日本 TOHO-TOWA Company, Limited |
公開 | イタリア 2018年8月29日(ヴェネツィア国際映画祭) アメリカ合衆国 2018年10月12日 日本 2019年2月8日 |
上映時間 | 141分 |
Copyright | © 2018 UNIVERSAL PICTURES |
映画「ファースト・マン」感想・レビュー
ヒューマンドラマとして観る「ファースト・マン」
人類初月面に降り立ち、帰還した男ニール・アームストロングのおよそ8年間(1961〜1969)の人生を、ぎゅっと凝縮した映画が「ファースト・マン」でした。
月面着陸したアポロ11号の船長として華々しさが目立つニール・アームストロングですが、そこには飛行士としての苦悩はもちろん、父親として、夫としての苦悩もあり、主演のライアン・ゴズリングがうまく演じていました。
人類初月面着陸という華々しい偉業を達成しつつも、米ソ冷戦下の影響でスタートしたアポロ計画。
決して順風満帆で平坦な道のりではありませんでした。
愛娘の病死、苦しい訓練、家族とのすれ違い、ソ連に先を越される腹立たしさ、クルーの突然の死、世論からのアポロ計画への疑念など。
そう言ったモノを乗り越えて達成された月面到達と地球への帰還。
史実と伝記の話に基づいているのでアポロ計画の歴史を知っている人にはたまらない映画だと思います。
ニール・アームストロングも含めて男たちが月に向かってひた走っているとき、男は使命感と達成感がありますが、地上で待つ女性たちの心の葛藤も描かれています。
戦争映画として観る「ファースト・マン」
怒られるかもしれませんが、宇宙をテーマとしていながらも、実はこの映画は戦争映画なんです。
米ソの冷戦状態における宇宙開発競争を観せています。
本編では描かれませんが、1957年ソ連は世界初の人工衛星打ち上げに成功します。
これをスプートニク・ショック(後述)と呼び、アメリカ合衆国がソ連に宇宙開発・ロケット開発で遅れを取り始めた事件です。
そして、1961年には「地球は青かった」で有名なソ連のユーリイ・ガガーリンは世界初の有人宇宙飛行を単体で成功させます。
宇宙開発に遅れに遅れたアメリカ合衆国が威信を掛けて掲げた「アポロ計画」が本編の映画の主軸となります。
これは冷戦映画でもあり、この視点でこの作品を観ると納得できるところがたくさんでてきます。
宇宙も月面も本物を意識してセットを組んだ撮影
撮影はできる限りアナログ撮影に徹しています。
宇宙船から見える宇宙の映像もLEDスクリーンを実際にレプリカの宇宙船の窓の外に置いて撮影しており、宇宙船を激しく揺らしての撮影もしており、ニセモノくささがありません。
この辺りはデイミアン・チャゼル監督のこだわりのようです。
また、月面のシーンもですが、これも採掘場や屋外の広大な敷地にセットを組み撮影しています。
撮影に使ったレンズは偶然にも1969年当時のニール・アームストロングたちが使ったのと同じタイプの中判カメラだったとか(パンフレット情報)。
私もカメラ撮影よくするのですが、レンズは資産であり、映像の表情を決定的に決めるモノです。
当時の月面の様子を同じようにスクリーンで観れていたんだとしたら感無量です。
第91回アカデミー賞で視覚効果賞を受賞したのも肯(うなず)けます。
映画「ファースト・マン」をキャストで振り返る
Neil Armstrong(ニール・アームストロング)
愛娘の病死に心を打ちひしがれ、傷心のときに悲しみから逃れるようにジェミニ計画(この計画が成功するとアポロ計画に変更される)に応募する。
寡黙で家庭でも仕事のことをあまり語らず、子どもたちと遊ぶことも少ない。
ひたむきに宇宙を目指して訓練を続け、上司からの評価は高いようす。
- Ryan Gosling(ライアン・ゴズリング)
- 生年月日 1980年11月12日
- 出生地 カナダ、オンタリオ州ロンドン
- 主な映画出演作品
- Blade Runner 2049(2017)/主演 K 役
- La La Land(2016)/主演 セバスチャン(セブ)・ワイルダー 役/第89回アカデミー賞 主演男優賞・第74回ゴールデングローブ賞 主演男優賞
- The Big Short(マネー・ショート 華麗なる大逆転・2015)/ジャレッド・ヴェネット 役
Janet Armstrong(ジャネット・アームストロング)
ニール・アームストロングの妻。
2人で愛娘の看病を続けていたが、娘は病死してしまう。
夫がNASAの選考試験に合格したときすごく喜ぶ。
いつも勝手に物事を決めるニールに対して反対することもなく、いつも受け入れてくれているように見える。
しかし、家庭を顧みないニールに実は不満げ。
- Claire Foy(クレア・フォイ)
- 生年月日 1984年4月16日
- 出生地 イングランド グレーター・マンチェスターストックポート
Edward Higgins White, II(エド・ホワイト2世)
アポロ計画の仲間の1人で、ニール・アームストロングの自宅の向かいに暮らしており、家族ぐるみの付き合いをしている。
アポロ計画の中では訓練とはいえ、初の宇宙遊泳を予定する人物で、後にアポロ1号の乗組員になる。
- Jason Clarke(ジェイソン・クラーク)
- 生年月日 1969年7月17日
- 出生地 オーストラリア クイーンズランド州ウィントン
- 主な映画出演作品
- Terminator Genisys(ターミネーター:新起動/ジェニシス・2015)/ジョン・コナー 役
- Dawn of the Planet of the Apes(猿の惑星:新世紀・2014)/マルコム 役
- The Great Gatsby(2013)/ジョージ・B・ウィルソン 役
Donald Kent “Deke” Slayton(ディーク・スレイトン)
アメリカ航空宇宙局(NASA)の飛行士育成部門の責任者。
地上からクルーを見守る。
- Kyle Chandler(カイル・チャンドラー)
- 生年月日 1965年9月17日
- 出生地 アメリカ合衆国 ニューヨーク州バッファロー
- 主な映画出演作品
- Manchester by the Sea(マンチェスター・バイ・ザ・シー・2016)/ジョー・チャンドラー 役
- Carol(2015)/ハージ・エアード 役
- The Wolf of Wall Street(ウルフ・オブ・ウォールストリート・2013)/パトリック・デナム 役
Buzz Aldrin(バズ・オルドリン)
ニール・アームストロングと共にアポロ11号の乗組員になる。
ニール・アームストロングと共に月面着陸船に乗り月面に着陸、人類2人目の月面歩行者となる。
- Corey Stoll(コリー・ストール)
- 生年月日 1976年3月14日
- 出生地 アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市
- 主な映画出演作品
- Ant-Man(2015)/スーパーヴィラン ダレン・クロス(イエロージャケット)役
アポロ計画の歴史
1961年から1972年にかけて実施され、1969年のアポロ11号以降全6回の月面着陸に成功しています。
1957年10月4日 スプートニク・ショック(ソ連)
米国・ソ連冷戦時代、1957年10月4日のソ連による人類初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げ成功の報により、アメリカ合衆国を始めとする西側諸国の政府や社会に走った。
その衝撃や危機感を指すと言葉として、「スプートニク・ショック」という言葉が有名。
宇宙開発競争の火蓋が切って落とされたのがこの瞬間からです。
宇宙開発はミサイル開発でもあるため、当時のアメリカ合衆国にとってはショックとダメージは大きかったはずです。
1958年 マーキュリー計画発動(米国)
1958年、NASAは人工衛星エクスプローラー1号の発射に成功し、次の目標は有人宇宙飛行という計画をたてます。この計画がマーキュリー計画(1958年から1963年)
1961年4月13日「地球は青かった」(ソ連)
1961年4月12日にソ連の宇宙飛行士ユーリイ・ガガーリンは世界初の有人宇宙飛行としてボストーク1号に単身搭乗し、有人宇宙飛行に成功します。
翌日の新聞で「地球は青かった」という言葉を残していることは有名でです。
ここでもアメリカ合衆国は宇宙開発で、またソ連に遅れをとったことになります。
1961年5月25日アポロ計画発表
宇宙開発の遅れを取り戻すため1961年5月に当時アメリカ合衆国大統領のジョン・F・ケネディが1960年代中に人間を月に到達させるとの声明を発表したのがアポロ計画の始まりです。
アポロ計画は月への有人宇宙飛行計画。
アメリカの2度目の有人宇宙飛行計画として、ジェミニ計画もこの時期に発足されます。
ジェミニ計画の成功がアポロ計画を前進させます。
ニール・アームストロングも初めは「ジェミニ計画」の選考試験に合格してからNASAのメンバーになりました。
1962年、月飛行方法の選択が決定する
1機の大型ロケット1台で月面に着陸しそのまま帰還する直接降下方式と、着陸船が月面で作業している間は司令船が月周回軌道上に残り、その後活動を終えて上昇してきた着陸船とドッキングして帰還する月周回ランデブー方式が最終候補に残ります。
直接降下方式では船体重量が非常に重くなり膨大なエネルギーを用意しないと月から離れることができないというデメリットがありました。
最終的的には軽量装備で挑める月周回ランデブー方式が採用されましたが、そのためにはドッキングできることを宇宙で証明する必要がありそのためのあらゆる過酷な訓練とテストが行われます。
1963年11月22日 ケネディ大統領暗殺事件
アポロ計画を発表したケネディ大統領がダラス市内をパレード中に銃撃され、死亡した事件です。
今なお事件は謎に包まれており、犯人がいまだ捕まっていない。
映画の本編にはあまり関係ありませんが、アメリカの歴史としてここに示しました。
1964〜1967年に掛けて過酷な訓練と試練の連続
歴史を紐解けばアポロ計画は決して順風満帆な計画ではありませんでした。
1965年には宇宙における世界初の船外活動をまたしてもソ連に先を越されます。
有人宇宙飛行の計画につき危険なことも多々ありました。
ここでは詳しく書きませんが、人命に被害がでることももちろんありました。
莫大な税金の投入と、度重なる人命事故に世間は「アポロ計画」への疑念を向けるようになります。
1969年7月16日 アポロ11号 月面着陸成功
ニール・アームストロング、バズ・オルドリン、マイケル・コリンズの3名がアポロ11号の乗組員でした。
月面に着陸したのはニール・アームストロング、バズ・オルドリン。
マイケル・コリンズはアームストロングたちが月面調査をしている間、母船(司令船)に残り月周回軌道上で、月面の写真撮影などを行なっていました。
最後に
この映画は決して、ニール・アームストロングを英雄として観せようとしている作品ではありません。
ごく普通のアメリカ人の男性だったニール・アームストロング。
しかし、愛娘の病死による傷心の拠り所を探すように駆け込んだNASAのジェミニ計画(有人宇宙飛行計画)。
全てを忘れるように必死に訓練に明け暮れ、気がつけばアポロ計画(月への有人宇宙飛行計画)に参加することに。
共に訓練に明け暮れていた親しいクルーたちも訓練中の不幸な事故に巻き込まれ、何人も亡くなっていく。
成功と死が隣り合わせの空間においてニール・アームストロングは何を考えていたのか、ぜひ、劇場のスクリーンで確かめて欲しいです。
以上、『映画「ファースト・マン」感想・レビュー(成功と死の隣り合わせの人生を観た)』でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
映画ファン宮川(@miyakawa2449)でした。
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