賛否両論の映画「ドラゴンクエス ユア・ストーリー」。
本作を観ずにレビューだけ読んで「これは駄作だ」と結論つけるつもりなら、やめた方がいい。
ラスボス戦で突きつけられた厳しい現実は観客を一度、どん底に突き落とします。
全否定が行われます。
映画を観た先に辛い現実があっても大丈夫な勇者こそ、作品を最後まで楽しめると思います。
言ってみればこの映画は製作陣から観客への挑戦状だったのかもしれません。
「勇者は絶望しない。なら、観客のあなたたちは絶望せずに最後まで物語を愛せるか?」と。
ネタバレなしでこの映画の厳しさと楽しみ方を紹介します。
映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」予告編映像
公式「東宝MOVIEチャンネル」のYouTubeチャンネルより
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映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』公式サイト|TRAILER
映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」あらすじ
引用元:映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』公式サイト|INTRODUCTION
少年リュカは父パパスと旅を続けていた。 その目的は、ゲマ率いる魔物たちに連れ去られた母を取り戻すこと。 旅の道中、遂にゲマと遭遇し、魔物たちと激しい戦いを繰り広げるパパス。 しかし一瞬のスキをつかれ、リュカが人質にとられてしまい、手出しができなくなったパパスは、リュカの目の前で無念の死を遂げる――
それから10年。故郷に戻ったリュカは「天空のつるぎと勇者を探し出せば、母を救うことができる」というパパスの日記を発見する。 父の遺志を受け継ぎ、リュカは再び冒険の旅にでることに。 立ちはだかるいくつもの試練、そしてビアンカとフローラ、2人の女性をめぐる究極の選択。 果たして冒険の先に待ち受けるものとは!?
映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」前評判の悪さはなんなのか?
「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」は映画公開前から評判が悪く、公開されてからも評判がますます悪くなりました。
ネタバレしない範囲で整理すると以下の通りです。
- 声優も山寺宏一以外起用されず、他は全て俳優が吹替をしている
- 主人公、パパス、ビアンカ、フローラのキャラデザインが原作通りではない。
- 原作通りに話が進まない!
- ラスボス戦の後、核心に触れたとき全てが否定された!
声優も山寺宏一以外起用されず、他は全て俳優が吹替をしている
俳優の吹替ですが意外と問題なく、最後まで楽しめました
アニメ映画では声優ではなく、俳優の起用がよくあります。
今回の映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」は100%近く俳優陣です。
俳優陣が声優を務めた場合によくある不安として、「吹替が下手くそ」「プロの声優の方が安心できる」というモノがあります。
この映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」ではアフレコ(映像を見ながら声を吹き込む)作業は行われておらず、プレスコ(映像なしで声の録音を行い、後で映像を当てる)を行なっています。
しかも、1人ずつの録音ではなく、主人公、リュカを演じる佐藤健さんを中心に、各俳優が同時に芝居を録音しているので不自然さが微塵も感じられません。
主人公のリュカは佐藤健臭さも、ヒロインのビアンカは有村架純臭さもない。
もう1人のヒロインのフローラを演じる波瑠(はる)は1人2役を演じていたが、作中で種明かしされるまで全く気づかなかった。
このプレスコという吹替手法は俳優をうまく声優に起用できる手法だったのだと思う。
ただし、プレスコは2年前に行なったモノであり、最後の仕上げの段階で追加された映像については従来通りアフレコで声を録音しているそうです。
それにしてもうまい仕上げになっていたと思いました。
俳優のセリフにキャラクターの口をどうやって合わせていたのかは興味あります。
音声を解析してプログラムで自動でキャラクターの口を動かすところまでしていれば、3DCGを起用した甲斐があったと思います。
実際にはどうだったのでしょうか?
主人公、パパス、ビアンカ、フローラのキャラデザインが原作通りではない
原作、鳥山明のデザインが感じられない
これは原作と映画作品では表現者が変わるので受け入れるしかない事実なんですよね。
私は観る前までは「主人公もビアンカも顔が違う」「うわぁ、最後まで観る自信ない」と思っていました。作品を観もしないで。
原作、ドラクエVに思い入れが強い人ほど、辛いかもしません。
私はドラクエシリーズでどれが一番好きかと聞かれれば、ドラクエVを答えます。
そんな私でも映画館で観たらモノの数秒で今回のキャラデザインについては慣れました。
特にビアンカは予告編や公式サイトで観ていたときよりも、映画の中の方が10倍も可愛く観えました。
これは本編を観ないと味わえない感覚です。
映画を観ないで文句をいうよりは、実際に観て判断した方がずっとかっこいいし、心入りも強くなって楽しめますよ。
ちなみにモンスターたちは鳥山明のデザイン通りでしたから、そこは安心していただけます。
原作通りに話が進まない!
いつも通りの思考停止、原作原理主義者の呟きがネットで広がる。
原作がある映画の宿命といえば宿命ですが、原作通りでないと気が済まない人がいます。
どうしても原作原理主義を貫く人には耐えらないかも知れないが、映画とゲームでは表現媒体が違うのだからそこは受け止める必要があると私は考えます。
しかも、原作は原作であり、映画のシナリオを考えるのは脚本家の仕事なので。
同じ話になる方がまず不自然だと考えた方がいい。
そもそも2時間ちょっとの時間に親子三代の物語を詰め込むのは到底無理です。
では、三部作にすればという声もありますが、だらだら長い映画を作られても困ります。
映画になった時点で原作とは別の作品と考えて観た方がより楽しめるものです。
どうしても原作通りでないと気が済まないなら、ドラクエVのゲームを一から遊びましょう。
ラスボス戦の後、核心に触れたとき全てが否定された!
これは映画製作陣から突きつけられた最大の試練でした。
この試練に敗れた人たちの心の叫びが映画の評価を低くしています。
ネタバレになるので詳しくは言えませんが、ラスボス戦の後、壮大な物語の否定が入ります。
なぜ、あのような演出を選んだのか、もっとうまい演出はなかったのか、と個人的には思いました。
しかし、世の中に公開された以上、これが今回の「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」の形でした。
観客はそれを受け止める必要があります。
しかし、あの物語をひっくり返すような演出は正直驚きました。
あれはまさに主人公リュカと同じくらいの絶望を観客が味わってもなお、物語を愛し続ける勇気を問う試練だったのでしょう。
まとめ
3DCGアニメーションの完成度は非常に高かったですし、俳優たちの芝居も完璧で楽しめました。
シナリオはドラクエ5をベースとしており、ファンタジーの世界が美しく、二大ヒロインも可愛くて最高でした。
私はネットのレビューや評価だけで作品を観ないで終わるのはもったいないと思います。
確かにラスボス戦の最後の展開は強烈すぎて受け入れられない人が大勢いることは残念には思います。
そこで、これからもし、映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」を観る人がいるなら主人公リュカのセリフを贈りたいです。
「この後、辛いことが起きても大丈夫かい?」と。
私はこのセリフはゲーム製作者から観客への問いかけ?………いや、観客への挑戦状だと考えています。
主人公リュカはいくつもの絶望に合おうとも挫折せず問題を解決し、最終的にラスボスを退治します。
このことはこれまでのドラクエに出てくる勇者全てに共通して言えることです。
観客は常に安全なところにいますが、この映画では観客に一度だけ絶対的な絶望を与えます。
それがラスボス戦の最後の展開です。
批判的な視点で見ればゼロ点評価になる映画かも知れませんが、良いところもたくさんある作品です。でも、安心してください。
覚悟を決めて観ていただければおよそ、絶望を乗り切れるでしょう。
そうすればあなたも勇者の仲間入りができるかも。
以上、『映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」感想・レビュー(ラスボス展開は驚きましたが、こんなドラクエVも悪くもない)』でした。
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