カルトホラー映画『ミッドサマー』感想・レビュー・考察(一人称、三人称、視点をずらすことで楽しみ方が変わるスゴイ映画)

カルトホラー映画『ミッドサマー』感想・レビュー・考察(一人称、三人称、視点をずらすことで楽しみ方が変わるスゴイ映画)

映画『ミッドサマー』は アリ・アスター監督の最新作。
アリ・アスター監督といえば2018年公開の映画『へレディタリー/継承』で世界中に恐怖を巻き起こした名監督であり、現在ハリウッドの製作陣が“最も組みたいクリエイター”として注目を寄せている監督の1人と言われています。

そんなアリ・アスター監督の最新作『ミッドサマー』の恐怖の舞台は、北欧の美しい花が咲き乱れ、白夜が続き日が沈まない楽園のようなホルガ村です。
一見ホラーとは皆無な様子です。
90年に一度の祝祭に訪れたアメリカの大学生たちを快く笑顔で受け入れる村人たちですが、ホルガには外界とは異なる風習・文化があり、彼らはその風習の違いに戸惑い、慄き、そして、恐怖体験をすることになります。

簡単にいえば、精神的に追い詰められるカルトホラー。
踏み込んでジャンルを説明するなら、コミューンが持つ価値観や異文化から外界の人間たちを攻撃するフォークホラーがこの映画のジャンルです。

ホルガ村の人たちの笑顔の裏に隠れる気味の悪さや、美しいはずなのになぜか不安になる風景、緻密な伏線とプロットに気づけば癖になる最恐のホラー映画です。

カルトホラー映画『ミッドサマー』予告編

YouTube PHANTOM FILM公式チャンネルより

『2020.2.21(金)公開『ミッドサマー』予告編』

予告編をご覧いただけたでしょうか。

『美しい映像』『美しい音楽』しかし、『不安にさせる映画』これがミッドサマーです。

『フィスティバル・スリラー』と書かれていましたね。

これは5人の大学生が訪れた白夜の村で行われる、9日間の祝祭に起きるホラーであるからです。

万人受けではありませんが、癖になる作りの映画でした。

映画『ミッドサマー』を観た後では、アカデミー賞を今年受賞した『パラサイト 半地下の家族』すら出来のいいお上品な作品に見えてくるから不思議です。

ホラー映画『ミッドサマー』あらすじ

双極性障害(躁うつ病)の妹が両親を巻き込んで自殺を行い、天涯孤独となった姉のダニー。
ダニーは付き合っているクリスチャンに相談するが、2人の中はギクシャクしている時期だった。
自身の精神疾患と家族を失ったトラウマに苦しみ続けるダニーを、恋人のクリスチャンは内心重荷に感じながら彼女を元気づけようとするが、別れ話を切り出せずにもいた。
ダニーとクリスチャンは、大学で民族学を研究する友人たちとスウェーデンの奥地にあるホルガで開かれる90年に一度の祝祭に訪れる。

優しい住人が陽気に歌い踊れるこの村は、美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まない白夜のため永遠につづく楽園に見えた。

しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、家族を失ったばかりのダニーの弱った心に妄想や、トラウマ、不安、恐怖が襲いかかる。

それは想像を絶する悪夢の始まりだった。

ホラー映画『ミッドサマー』スタッフ情報・基本情報

  • 原題:MIDSOMMER
  • 監督・脚本:アリー・アスター
  • プロデューサー
    • パトリック・アンディション
    • ラース・クヌードセン
  • 撮影監督:パヴェウ・ポゴジェルスキ
  • プロダクション・デザイン:ヘンリック・スヴェンソン
  • 編集:ルシアン・ジョンストン
  • 衣装デザイン:アンドレア・フレッシュ
  • 音楽:ボビー・クルリック
  • 音楽編集:ジーン・パーク
  • キャスティング・ディレクター:ジェシカ・ケリー
  • 公開年:2019年
  • 上映時間:147分
  • 著作権:(C)2019 A24 FILMS LLC. All Rights Reserved.

ホラー映画『ミッドサマー』出演者

カルトホラー映画『ミッドサマー』より 右:フローレンス・ピューが演じる、ダニー 左:ジャック・レイナーが演じる、クリスチャン
カルトホラー映画『ミッドサマー』より
右:フローレンス・ピューが演じる、ダニー
左:ジャック・レイナーが演じる、クリスチャン
©2019 A24 FILMS LLC. All Rights Reserved.

ダニー・アルドール: フローレンス・ピュー

メンヘラで「かまってちゃん」タイプ。
クリスチャンに依存して迷惑かけていることを自覚しているが、やめられない。

  • Florence Pugh(フローレンス・ピュー)
  • 生年月日 1996年1月3日
  • 出身地 イングランド・オックスフォード
  • 主な映画出演作品
    • Black Widow(ブラック・ウィドウ・2020)
    • Little Women(ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 ・2019) / エイミー・マーチ 役
    • Midsommar(ミッドサマー・2019) / 主演 ダニー 役

クリスチャン・ヒューズ: ジャック・レイナー

ダニーの恋人。
優柔不断で煮え切らない、周りの状況に回されるタイプ。
ダニーに別れ話をだそうと思っているらしいが、言い出せないでいる。

  • Jack Reynor(ジャック・レイナー)
  • 生年月日 1992年1月23日
  • 出身地 アイルランド・ウィックロー州
  • 主な映画出演作品
    • Midsommar(ミッドサマー・2019) /  クリスチャン 役
    • Transformers: Age of Extinction(トランスフォーマー/ロストエイジ・2014) /  シェーン・ダイソン役

ホラー映画『ミッドサマー』感想・レビュー

絶対に見てはいけない

カルトホラー映画『ミッドサマー』より 泣き叫ぶダニーに共感し、同じ悲しみを共有しようと集まるホルガの人たち
カルトホラー映画『ミッドサマー』より
泣き叫ぶダニーに共感し、同じ悲しみを共有しようと集まるホルガの人たち
©2019 A24 FILMS LLC. All Rights Reserved.

この映画『ミッドサマー』を観ると精神的なダメージが大きいので、メンタルが弱い人やメンタル療養中の人は絶対みてはいけない作品です。

ホラー映画のジャンルに整理されていますが、細かくジャンルわけをすると、これはカルトホラーの中でも『フォークホラー』の分類にわけられます。
『ホルガ』という隔離された小さな民族(フォーク)が持つしきたりや伝承、習わしが主人公たちにとってのホラーとなっていきます。
アメリカの都市に住んでいればまずあり得ない、恐怖のしきたりや伝承が彼らの精神を蝕んで(むしばんで)いくのです。
観ている側も精神的に追い詰められていき、人間不信に陥ること間違いなしのカルトホラー(フォークホラー)。
血肉が飛び散るようなグロはあるにはありますが、精神的なグロさが際立ちます。

人間の不安や絶望を徹底的にエグッてくる精神的グロな作品です。
鑑賞する時の注意点は主人公のダニーに共感しすぎないことです。
ダニーに共感しすぎると、観終わったときは本当、後味の悪さ、後悔が残るでしょう。
それでも不思議と数日経つとまた観たくなってくるのですが。

絵画やタペストリー

カルトホラー映画『ミッドサマー』より ミッドサマーを象徴する絵画
カルトホラー映画『ミッドサマー』より
ミッドサマーを象徴する絵画
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映画『ミッドサマー』ではたくさんの絵画やタペストリーが頻繁にでてきますが、これらには映画のヒントというか予言的な描写が描かれているものが目立ちました。
映画の始まりや、旅立つ前のダニーが寝ていた部屋の後ろにあった絵や、ホルガ村で見せられた数々のタペストリーは実はこれから起きる現象を予言していたことに気づいた時はゾクっとしました。

そういう意味では2回目鑑賞することをお勧めします。

2回目観たときに「こんなところにこんな絵がすでにあったのか!」と驚くはずです。

上にあげたイラストも1度観たことがある人であればおよその内容は理解できるはずです。

さて、問題は映画のどの部分に出てきたでしょうか?

緻密な伏線やプロット

全てが緻密に計算され、伏線やプロット(物語の繋がり)が張り巡らされています。
どこに触れても蜘蛛に捕まるように、見えにくい蜘蛛の巣のように。

例えば、『ミッドサマー』では食事のシーンがたびたびでてきます。
食事のシーンだけであれば何も問題がないわけですが、事前に見せられている伏線や前後の状況(プロット)から「今出されている肉はなんの肉だ?」と考えただけで怖くなってきます。

しかし、蜘蛛の巣に囚われた虫(主人公たちと観客)たちはパニックのあまり全体が見えていない。
劇場に足を踏み入れた時点で、観客は監督の罠(プロット)につかまっています。

ただの食事シーン、ただの干物のシーン、ただの寝室のシーンに写されているものが実は重要なメッセージを示している場合があります。
もし、プロットに1つも気づかずに映画を見終えていたら、ただ、胸くそ悪い映画で終わります。

しかし、1つ、2つのプロットに気がついていれば、映画全体の見方がかわってくるでしょう。

映画全体の見方がどう変わるかは?『ミッドサマー』の楽しみ方で説明します。

ホラー映画『ミッドサマー』の楽しみ方は3つある

この映画はともすれば主人公たちダニーやクリスチャンに共感して観るべき作品かもしれませんが、なぜかこの2人は共感されにくい性格設定がされています。

ダニーはメンヘラでめんどくさいタイプ。
クリスチャンは優柔不断でどっちつかずの無神経男でした。

私が考えるイメージですが、この2人に共感しないで観た方がいいでしょう。

ダニーとクリスチャンに共感して観ていると多くの人が恐らく、「胸くそ悪い映画だった」「私には合わなかった」「ホラー映画じゃないよね?」という感想を持ったかもしれません。

多分ですが、監督は主人公たちはもちろん、ホルガ(コミューン)から引いた視点で映画を観せようとしているように感じました。
繰り返しになりますが、はっきり言えば、第3者の俯瞰(ふかん)した視点で全体を観せようとしていると思います。

俯瞰して観ると、実に冷静にこの映画を楽しめたからです。
そういう意味では2回見た方がずっと納得できるし、面白さが伝わってくる映画でした。

もし、数回見るのであれば、主人公たちの視点で素直に鑑賞し、2回目は俯瞰した視点で、3回目はホルガコミューン、例えばペレの視点で観たりするとまた違った楽しみ方があるかもしれません。

映画『ミッドサマー』の考察・解説

これより『ミッドサマー』の考察・解説記事です。

そのため『ミッドサマー』のコアに迫ります。
作中のネタに関する紹介も含まれます。
ネタバレしても問題ない人が観てください。
ネタバレごめんっていう方はここから先へすすまないようにしてください。

映画は観たけれど、全体像が曖昧で映画全体を復習したい人向けの記事です。

考察したい人は是非、読んで楽しんでいただければと思います。

なお、映画『ミッドサマー』の配給元より公式の『観た人限定の完全解析ページ』があります。

観た人限定の完全解析ページ → https://www.phantom-film.com/midsommar/mystery/

こちらも是非お読みください。

※映画ネタバレのエリアここから始まります

ダニーの笑顔の意味

ホルガの彼らはコミューン全体で『家族』であり、喜びや悲しみ、苦痛、苦しみはもちろん、性の快楽をもコミューン内で共有していました。

これはダニーが発作的に泣き出したり、怒り出したりしたときはもちろん、劇中、72歳を迎えた老人が崖から飛び降り命を絶つ際に自殺し損ねたとき、老人の苦痛を全員で共有していました。

映画の一番最後にダニーが笑顔になった印象的なシーンがありましたね。
あのときは目の前で『9人の生贄』が火炙りで殺され、その中にダニーの恋人クリスチャンも含まれていました。
このときダニーは火炙りを眺めつつ発作的に苦しんでいましたが、絶望を乗り越えて受け入れたとき、悟ったのではないでしょうか。
ホルガ村についてから続く絶望の繰り返しの中で、恋人クリスチャンですら自分を救ってくれなかったが、ホルガの人たちは全員で彼女の苦しみを常に共有してくれる、、、絶望すら受け入れてくれる。
度重なる絶望の連鎖に苦しめられ、自分の苦しみにホルガの人たちが異常なまでに共感してくれる姿に、自分の絶望を受け入れ、ホルガの人たちを受け入れれば自由に、そして、幸せになれるとダニーは考えた。
その思考の先がエンディングに見せた表情だったのではないか?
と私は考察しています。

諸悪の根源

カルトホラー映画『ミッドサマー』より 左:ヴィルヘルム・ブロングレンが演じる、ペレ。 ダニーを心配しているように見せかけて、ダニーの心奥深くに隠していた絶望を思い出させる(2回目)
カルトホラー映画『ミッドサマー』より
左:ヴィルヘルム・ブロングレンが演じる、ペレ。
ダニーを心配しているように見せかけて、ダニーの心奥深くに隠していた絶望を思い出させる
©2019 A24 FILMS LLC. All Rights Reserved.

全ての諸悪の根源はホルガ村出身のペレだったわけですが、ひょっとするとダニーの妹と両親の死にすらペレが関わっていたのではないか?と、私は疑っています。

映画の中では直接手を下す描写はありませんでしたが、死体の表現や音楽がそんな様子でした。
また、ホルガに到着した後、ダニーの思考の中にホルガの儀式と両親の死を結びつけたイメージがありました。

おそらくそうに違いありません。

全てのシーンにあらゆる伏線が張られ、全てのシーンが様々なプロットとつながっている緻密さに驚かされる作品でした。

以上、「カルトホラー映画『ミッドサマー』感想・レビュー・考察(一人称、三人称、視点をずらすことで楽しみ方が変わるスゴイ映画)」でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。