映画『透明人間(2020)』感想・レビュー(見えない最高の恐怖がスクリーンから伝わる)

映画『透明人間』 サイコパス
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映画『透明人間(原題:The Invisible Man・2020年)』は古典SFの巨匠H・G・ウェルズの『透明人間(原題:The Invisible Man・1897年)を原作として、現代風にアレンジしたサイコサスペンス・ホラー作品です。

監督・脚本は大ヒットホラー映画『ソウ(Saw)』シリーズの脚本を務め、『インシディアス 序章』『アップデート』では監督・脚本・製作を担当したリー・ワネルが務めます。
リー・ワネル監督が前作担当したSFホラー映画『アップデート』で培ったノウハウを元に新しいことにもチャレンジした今作。リー・ワネル監督にとっては実力の見せ所だったと思います。

製作には低予算で高い効果をあげることで評判が高いジェイソン・プラムが参加しています。
ジェイソン・プラムこれまで製作に関わった映画は数多く、『パラノーマル・アクティビティ』『インシディアス』『ゲット・アウト』『アス(Us)』とそれぞれが大ヒットしています。
製作についても数々のホラー映画を仕上げてきたジェイソン・プラムだからこそ無駄のない洗練された作品に仕上がっていたと思います。

主演は2017年にドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』でゴールデングローブ賞女優賞を受賞した実力派のエリザベス・モスが務めます。
『アス(Us)』は主人公の友人として出演したエリザベス・モスは自分のクローン人間に殺される役と、殺す側のクローン人間の役を不気味なまでに怪演していました。

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映画『透明人間』の予告

引用元:YouTube(ユニバーサル・ピクチャーズ公式より)

『ゲット・アウト』、『アス』などの製作でハリウッドのホラー映画を牽引する
ブラムハウス・プロダクションズと『ソウ』シリーズの生みの親リー・ワネルが監督、
脚本、製作総指揮を手掛けた、本年度注目No.1の恐怖映画!
ユニバーサルのクラシック・キャラクターにインスパイアされ、最先端の技術で恐怖と狂気に満ちた「透明人間」を描き出す!

映画『透明人間』のあらすじ

引用元:映画『透明人間』公式サイトより

富豪で天才科学者エイドリアンの束縛された関係から逃げることの出来ないセシリアは、ある真夜中、計画的に彼の豪邸から脱出を図る。

失意のエイドリアンは手首を切って自殺をし、莫大な財産の一部を彼女に残した。

セシリアは彼の死を疑っていた。

偶然とは思えない不可解な出来事が重なり、それはやがて、彼女の命の危険を伴う脅威となって迫る。

セシリアは「見えない何か」に襲われていること証明しようとするが、徐々に正気を失っていく。

  • 監督・脚本 リー・ワネル
    『インシディアス 序章(2015年)』『アップグレード(2018年)』監督・脚本・製作
    『ソウ(SAW)』シリーズ、『インシディアス』シリーズ脚本..etc
  • 原作
    • H・G・ウェルズ『透明人間』
      ジェイムズ・ホエール『透明人間』
  • 製作
    • ジェイソン・ブラム
      製作に関わった作品
      『パラノーマル・アクティビティ』『インシディアス』『スプリット』『ゲット・アウト』『アス(Us)』『アップグレード』…etc
    • カイリー・デュ・フレズネ
  • 製作総指揮
    • リー・ワネル
    • ローズマリー・ブライト
    • ベン・グラント
    • ベアトリス・セケイラ
    • ジャネット・ヴォルトゥルノ
  • 出演者
    • エリザベス・モス
    • オリヴァー・ジャクソン=コーエン
    • オルディス・ホッジ
    • ストーム・リード
  • 音楽 ベンジャミン・ウォルフィッシュ
  • 製作会社
    • ブラムハウス・プロダクションズ
    • ゴールポスト・ピクチャーズ
    • ナーバス・ティック
  • 配給
    • ユニバーサル・ピクチャーズ
    • 東宝東和
  • 公開
    • オーストラリア 2020年2月27日
    • アメリカ合衆国 2020年2月28日
    • 日本 2020年7月10日
  • 上映時間
    • 124分
  • 著作権 © 2020 Universal Pictures

映画『透明人間』感想・レビュー

映画『透明人間』DVで悩んだ女性が絶望と立ち向かっていく映画でしたが、最高にクールで新しく楽しめる作品でした。

どのような絶望と立ち向かっていくのか?

IQが高くずる賢く、他人を操ることに長けており、DV(配偶者暴力)を振っても証拠を残さず、社会的信用が高いその男性を誰も疑うことがない。
むしろ、被害者女性は精神的に病んでいて、無職で社会的信用もほぼない。
そのためDVを訴える女性を誰も信用しなくなり、彼女の声は誰にも届かなくなっていく、そんな絶望的な女性の映画です。

追い詰めていく側が『透明人間』であり、DVを受けた女性は本当のことを訴えて助けを求めるが、誰も彼女の言葉に耳を貸してくれない。

ここからが彼女セシリアの本当の苦しみです。
DVとPTSDで苦しみ、行動を起こして自由を手に入れたにも関わらず、まだ元彼の見えない影に苦しめられる。

周りに相談しても、「精神的にセシリアはまいっているだけでは?」と思われるだけで、取り合ってくれない。
誰も死んだ男が邪魔をしているという話を信じてくれません。
彼女は徐々に孤独に追い込まれていきます。

社会の中で女性の声が聞き入れられにくく、声の大きい男性の方が意見が通りやすいということを示しているようにも見える映画でした。
また、セシリアの声を誰も聞き入れてくれないことで、社会的には透明人間だと暗示されていたのかもしれません。

映画『透明人間』の見どころ・魅力は?

第一は『透明人間』という見えない存在を映像でどう表現しているのか?
これがポイントです。
カメラの動かし方、構図が見えない空間に透明人間の存在を暗示しています。
ドキドキしながら観て欲しい。

また、映像だけではありません。
音やその他の気配にも気を配って欲しい。
映画館ではスクリーンからの映像と音に注意して透明人間の気配を見落とさないように主人公セシリアになったつもりで身を守って欲しいです。

彼女になりきって観ているだけで心拍数がさらに上がるでしょう。

第二は追い詰められていく主人公セシリア・カス(エリザベス・モス)です。

彼女の演技です。
逃げる、平穏、幸せ、疑問、確信、絶望、怒りさまざまな感情を見せてくれるエリザベス・モスの芝居から目が最後の最後まで離せません。
とにかくすごいと思いました。

1人で透明人間と戦い続けるシーンでは映っている人間は彼女だけです。
映っているのが彼女1人とは当たり前のことですが、その演技をやり通した彼女の力量は評価に値すると思います。

ホラー映画やサスペンス映画の主演をはれる俳優はさすがだと思わされます。

第三はリアリティを示していることです。

こんな話ならあり得そう。
こんな透明人間だったら居そう。
こんな追い詰められかたしたら精神的に参りそう。
セシリアを応援してあげたいけど、透明人間が何枚も上手、ああ、もう!と感じる怒り。

観ている側の感情をうまく揺さぶってくるので、どのシーンもリアリティを感じるし、同時に恐怖も感じます。

結果、全編を通して緊張感が画面を支配していて、だれることがありませんでした。

映画に限ったことではありませんが、映画ではリアリティこそが作品の完成度の鍵を握りますが、『透明人間』も文句なしのリアリティでした。

映画『透明人間』の新しい取組

『透明人間』というと、透明人間になる技術を開発した科学者の視点で語られた原作や映画は有名ですが、今回は『透明人間』から狙われる女性が主人公になる作品でした。

『見えないものと闘う』というと、心霊現象や悪魔といったモノが最初に頭に思い浮かべますが、これはSF映画です。
それで他に『見えないものと闘う』映画がないかと考えたのですが、ありました。
スティーブン・スピルバーグ監督の出世作『ジョーズ(1974年)』です。

私が書いた次の記事の中に次のような下りがあります。

引用元:海洋パニック!サメ映画「MEG ザ・モンスター(2018)」と不朽の名作「ジョーズ(1975)」比較してみた – ミヤカワ映画ブログより

ジョーズを見ていて私も感じましたが、サメの姿を見せずに「見えない暗示」だけですごく恐怖を感じさせてくれました。

映画開始 5 分もみたないところで、最初の女性の犠牲者がでますが、ここではサメの姿は一切でてきません。
彼女が泳ぐ海の下に「何かがいる」という暗示と、演技と音楽の3つの相乗効果で恐怖がすごく伝わってきます。

第 2、第 3 の被害者が出るときも全容は一切出てこないのです。

「何もない」ことで怖さを演出できたというのはすごいと思います。

映画『透明人間』では透明人間の存在感、殺意だけが画面から感じられます。
もちろん、実際に透明人間は目に見ることはできません。
スクリーンには被害者のセシリアしか映っていないのにも関わらず、そこからは彼女への殺意と透明人間の存在感が伝わってきます。

見えない存在を感じさせ、観ているものに恐怖を感じさせる映画は『ジョーズ』に通じる物がありました。

この映画はテレビや電子端末ではなく、大きなスクリーンで観る価値のある作品です。

『ジョーズ』に関しては、こちらのブログ記事で解説しています。

映画『透明人間』のキャスト

セシリア・カス(エリザベス・モス)

映画『透明人間』より エリザベス・モスが演じる、セシリア・カス

映画『透明人間』より
エリザベス・モスが演じる、セシリア・カス
© 2020 Universal Pictures

天才科学者エイドリアンからのDVと束縛から逃れるためにある夜、エイドリアンの自宅兼研究所から逃亡を決行する。
無事逃げおおせることに成功したセシリアだがPTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しむことになる。

エイドリアンの死の知らせが彼女のもとに届くが、彼の死を彼女は疑うことになる。

  • Elisabeth Moss(エリザベス・モス)
  • 生年月日 1982年7月24日
  • 出生地 アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス
  • 主な映画出演作品
    • The Invisible Man(透明人間・2020) / 主演 セシリア・カス 役
    • Us(アス・2019) / キティ・タイラー 役

映画『透明人間』を通してみるリー・ワネル監

リー・ワネル監督は脚本の経験が長い監督であり、今作は3作目の監督作品にあたります。

映画学校在籍中にジェームズ・ワンと出会い、最初に作った短編映画『ソウ(2003年)』を元にした2004年版『ソウ』が大ヒット。
シリーズとして7作品がすでに公開されています。

ジェームズ・ワンもホラー映画では有名な人物ですが、リー・ワネルも有名な人物です。

『ソウ』『ソウ2』や『アップデート』などを観ていると科学技術や医学技術に基づいたSF的な脚本を考えるのがリー・ワネル氏は好きなように感じました。
特に『アップデート』は監督・脚本・製作を担当しました。

映画『透明人間』を通してみる製作ジェイソン・プラム

ジェイソン・プラムはプラムハウス・プロダクションの創立者です。

プラムハウス・プロダクションは低予算で質の高い映画を製作する仕組みを作り上げています。
きっかけは2007年の『パラノーマル・アクティビティ』で、製作費約1万5千ドルで、興行収入を約1億9千万ドルを達成しています。
日本円にしておよそ180万円未満で製作した映画で、200億円以上売り上げたことになります。

これ以外にも2010年では『インシディアス』ジェームズ・ワン監督、脚本リー・ワネルでは、製作費は約150万ドルで、興行収入は約9700万ドル。

2017年の『ゲット・アウト』監督・脚本ジョーダン・ピールでは、製作費約450万ドルで、興行収入約2億5千万ドルを達成しています。

『透明人間』は当初ユニバーサル・ピクチャーが大型予算を組み、ジョニー・デップ主演で撮ろうとしていたようですが、計画は一時中止になったところをジェイソン・プラムが立て直したようです。

ジェイソン・プラムは他人が目をつけなくなった脚本に目を止めて、発掘し、作品を磨いてヒットさせることに非常に長けているプロデューサーです。

まとめ:映画『透明人間』

映画『透明人間』の完成度は非常に高いと思います。

SF的にも無理のない設定で表現できていました。

この映画の一番の怖さは『人間』でした。

DVの男に追い詰められたセシリア、透明人間に追い詰められ家族も友人からも見放された孤独なセシリア、無実の罪をきせられて追い詰められるセシリア。
常に危機に陥るセシリアを追い詰めるのは常に人間です。

人間社会の中で孤独では生きていけません。
自由を捨てて束縛を受け入れれば、不自由なく生きていける人生を選ぶか?
束縛を拒否し、自由を手に入れるために敵わぬ相手と戦い続け苦しい生き方を選ぶのか?

究極の選択を突き詰められたときあなたはどうしますか?

セシリアはその答えをこの映画の中で示してくれました。

人によって感想は違うと思いますが、私が一番怖いと思ったのは一番最後のシーンでした。

以上、「映画『透明人間(2020)』感想・レビュー(見えない最高の恐怖がスクリーンから伝わる)」でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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