映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』第二次世界大戦末期の女性の日常と非日常

映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』第二次世界大戦末期の女性の日常と非日常

2016年に公開され大ヒット・話題となった映画『この世界の片隅に』に250カットも追加された映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開されました。

250カットを増やしたただの長尺された作品ではなく、世界観を変えずに新しい解釈が加えられた映画でした。

私は2016年版は観ないで、今回の2019年版『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を先に鑑賞しました。

その後に2016年版を観ましたが、今回の新作を観れば2016年版で表現されていなかった、すずの内面をしっかり描写していました。前作を観た人の中には水原哲、リン、周作との関係において疑問を持っていた人もいるかもしれませんが、抜け目なくしっかり描かれていました。

2016年版はすずを通した戦前・戦中・戦後のドキュメンタリー映画。
2019年版はすずの内面をしっかり見せる全く違う新作だと思っていただければいいのではないでしょうか。

見せ方が違う作品だと思いました。

映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』予告編

公式のYouTubeチャンネル『劇場アニメこの世界の片隅に』より

ぜひ、この予告編を観て欲しい。

2016年版を観たことがある人は気がつくと思うが、主人公すずとリンのエピソードがかなり今回のコアになっていることが推測できます。

前回作品でリンの出番は1カットしかなかったと思われます。

それが今回の新作では物語の中心に関わってくることが観て取れるんです。

前回ではほとんど描かれなかったシーンで構成された予告編、ずるいですよね(笑)。

前回と同様に優しい気持ちで終われることは約束するので、前回観た人も、今回初めての人も観てみるといいと思います。

この予告編みると、劇場で観たときの感動の気持ちがまた戻ってきました。

因みに2016年版の予告編は次のリンククリックすると観れます。

(10) すずさんのありがとう – YouTube』当時の予告編動画と見比べるとまた面白さが増すかもしれません。

映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』あらすじ

引用元:この世界の(さらにいくつもの)片隅に【映画】

誰もが誰かを想い
ひみつを胸に 優しく寄り添う
広島県呉に嫁いだすずは、夫・周作とその家族に囲まれて、新たな生活を始める。
昭和19年、日本が戦争のただ中にあった頃だ。
戦況が悪化し、生活は困難を極めるが、すずは工夫を重ね日々の暮らしを紡いでいく。

ある日、迷い込んだ遊郭でリンと出会う。境遇は異なるが呉で初めて出会った同世代の女性に心通わせていくすず。
しかしその中で、夫・周作とリンとのつながりに気づいてしまう。
だがすずは、それをそっと胸にしまい込む……。

昭和20年3月、軍港のあった呉は大規模な空襲に見舞われる。
その日から空襲はたび重なり、すずも大切なものを失ってしまう。
そして、昭和20年の夏がやってくる――。

今回の予告編は観ていただけましたか、前回と内容が若干変更されていることがわかります。

そして、今回の『あらすじ』を公式サイトから引用しましたが、リンさんと周作がかなり深く関わってくることを匂わせていますね。

映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』感想・レビュー

「すず」という少女を通して、昭和の戦前、戦中、戦後の広島の呉市を見せた映画でした。

「すず」という少女は「普通」の女の子という設定をしており、現代人の我々に近い価値観を持っている。
我々が共感しやすいような人物像なのだと思う。

「すず」はまさにこの映画の中では平和の象徴であって欲しい、そう感じさせる女の子。

その女の子が成長し、お見合いをして、見ず知らずの男性と結婚し、他人の家に嫁ぐことに。

彼女を取り巻く時代は戦争中であり、嫁ぎ先では生活習慣が一変する。

それでも彼女は常に笑顔で生きていく。

当時は当たり前だったことも、現代では通用しなさそうなことがたくさん出てくる。
『昔は○○だった』という価値観の押し付けではなく、環境の変化に争うことなく素直に力強く生きる彼女が輝いて見える作品でした。

ある日、迷い込んだ遊郭の町中でであった遊女のリンとすず。

対照的な人生を歩んできた2人の女性が友人同士になる。
このエピソードが今回の新作でコアとなる物語。

前向きで輝かしいすずでも戦争で起きる出来事で、人生のどん底に落ちて笑顔を失うことになってしまう。
辛くても周りに当たらず、グッと耐える彼女がいたたまれない。

すずは女房として、嫁として嫁ぎ先の北條家の中での自分の居場所を模索し、もがくことになる。
そんなときリンは彼女にとってどんな存在になるのか?

そこではどんな境遇でも笑顔の大切さ、人を疑わないこと、人を許すことの大切さを教えてくれるそんな素敵な映画だったと思います。

アニメーションの映像作品として

水彩画っぽいというか、優しい色使いが特徴の『この世界の片隅に』。
すずの性格がおっとりしていて、ぼーっとしていることも関係していると思うが、想像と現実の境界が曖昧なる絵作りが印象的でした。

初めはすずさんの『空想?』と思うこともたくさんありましたが、そうではなかった。

戦争中、戦後、被曝といった本来なら悲惨な時代を和ませながらも現実を伝えるにはいい手法だったのかもしれません。

アニメーション作品はそれほどたくさん観ていないので比較できないが、ジブリ映画などにもない絵作りであり、斬新で興味深い演出でした。

映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』において注目される人物

北條すず(旧制 浦野)・・・のん(声)

映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に』より 北條すず(声 のん)
映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に』より
北條すず(声 のん)
©2019 こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会

幼いときからボーッとしたところがあり、のんびり屋さん。
絵を描くのが大好きで特技の1つ。

一度も会ったことがない男性とのお見合いで19歳で結婚することに。
嫁ぎ先で健気に前向き働くすずが眩しい。

北條周作・・・細谷佳正(声)

映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に』より 左:北條周作(声 細谷佳正)
映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に』より
左:北條周作(声 細谷佳正)
©2019 こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会

すずを探して、求婚に近い形でお見合いを求めてきた男性。
昔はそんな結婚も当たり前だった。
彼には彼女を選ぶ理由があった。

水原哲・・・小野大輔(声)

映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に』より 左:水原哲(声 小野大輔)
映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に』より
左:水原哲(声 小野大輔)
©2019 こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会

すずの同郷の同級生。
子供の頃はやんちゃな男の子だった。

大人になってすずと再会する。

白木リン・・・岩井七世(声)

映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に』より 右:白木リン(声 岩井七世)
映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に』より
右:白木リン(声 岩井七世)
©2019 こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会

すずがお使いの帰りに道に迷ったところで道案内してくれた、遊郭で働く女性。

今回の公式発表のあらすじではすずの夫、周作と何やら過去に関係が?あるような情報が出ているが、どんな関係が?
気になるところですね。
また、予告編ではすずと友情を深めているように見えるがどんな関係を継ぐことになるのか気になる。

まとめ

舞台は広島県の広島市と呉市。

2つの町の距離は25km前後、今なら車で30分ぐらい。

徒歩なら休憩なしで歩き続けて5時間の距離。

呉市は呉海軍工廠(軍港)があったため第二次世界大戦では多くの空襲があった町。
当時、世界最大級の戦艦大和が建造されたのも呉市の軍港である。

■戦艦大和をテーマとした映画『アルキメデスの大戦』

広島市は原爆が落とされた町であることは日本人なら全員が知っていることと思います。

以前、1度だけ広島市の原爆ドームと平和記念館に足を運んだことがありました。
戦争の悲惨さはもちろん、被爆の悲惨さ、世代を超えても被曝の後遺症が続く現実、被爆においてなかなか国からの補償が降りなかったことなど赤裸々に伝えられていました。

日本人なら事実を知るために、広島の原爆ドームや平和記念館は1度は訪ねたらいいところだと私は思っています。
そして、この映画『この世界の片隅に』は日本人なら1度は観てもいい映画かもしれません。

今回の『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』については、『孤独』と『優しさ』が前作よりもより明確に表現されていたと思います。

そして、すずとリンを通して、日常と非日常をより深く対比させた物語であり、すずとリンはある意味ではお互いになり得たもう1人の自分だったのかな?と思ったりする感想もありました。

新作と旧作を比較すると全く違う印象を受けたのは私の正直な感想です。

初めて観る人も、旧作観た人もぜひ、ご覧になられてはいかがでしょうか。

公開先の劇場は公式サイト『この世界の(さらにいくつもの)片隅に【映画】』にアクセスして確認ください。

以上、「映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』第二次世界大戦末期の女性の日常と非日常」でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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