映画『Fukushima 50』感想・レビュー(セミ・ドキュメンタリー映画だが、そのまま受け入れていいのか?)

映画『Fukushima 50』感想・レビュー(セミ・ドキュメンタリー映画だが、そのまま受け入れていいのか?)

映画『Fukushima 50』が3月6日に公開されました。
監督

2011年3月11日 14:46。マグニチュード9.0、最大震度7という、日本観測史上で最大規模の東日本大震災が発生したことは、まだ記憶に新しい。
この日は金曜日だった。
どこで何をしていたのかも記憶しているぐらい印象深い日でした。
私が住む北陸の金沢でも大きな揺れを感じました。
あれから9年。

映画『Fukushima 50』は事実を元に映画性を高め、エンターテインメント作品として仕上がっています。
まだ10年経っていないため、エンターテインメントにするにはまだ早いかもしれませんが。
危険な原発内で活躍し、命をかけて頑張ってくれた職員達をヒーローに仕立てた物語でもあります。
映画なのだから、観客を楽しませることも重要です。
事実通りでないというお怒りも時折聞く映画ではありますが、震災の記憶を風化させないために一翼を担う作品だと思います。

ドキュメンタリー映画の分類に入れるなら、セミ・ドキュメンタリー映画ということにするといいかもしれませんね。
セミ・ドキュメンタリーという言葉は私がいま作ったことばですが、フィクション6割、事実4割ぐらいで観た方がいいかも知れない。

4年前にNHKが取材し、製作した『原発メルトダウン 危機の88時間』というドキュメンタリードラマがあるが、あの内容と今回の映画『Fukushima 50』はほぼ似ている。
NHKは今年、再び再放送(2020年3月12日(木) 午後7時00分(90分) BS1)を決定している。なお、NHKの『原発メルトダウン 危機の88時間』は2つの賞を受賞している。

  • 第42回 放送文化基金賞 テレビドキュメンタリー番組部門 優秀賞
  • 第50回 アメリカ国際フィルム・ビデオ祭 最優秀賞、ゴールド・カメラ賞 受賞

メディアのフィルターがかかっているため鵜呑みにするのは危険ではあるが、NHKの映像は整理されていて、映画『Fukushima 50』よりも起きていた事象が分かりやすい。
また、映画で描かれた消防車による給水作成が、成功していなかったこともこの映像をみるとわかる。

映画『Fukushima 50』をご覧になった方は『原発メルトダウン 危機の88時間』も合わせて見ることお勧めします。
大きな声では言えないですが、3/10 13:00現在 YouTube で2016年当時放送された『原発メルトダウン 危機の88時間』が丸っとアップされてもいます。

映画『Fukushima 50』予告編

YouTube:KADOKAWA映画公式チャンネルより

映画『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)予告編

映画『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)、3月6日(金)公開。

2011年3月11日午後2時46分、東日本大震災が発生。福島第一原発は危機的状況に陥る。
原発内に残り、事故の収拾にあたった地元福島出身の作業員たちは海外メディアからFukushima 50(フクシマフィフティ)と呼ばれた。あの中で本当は何が起きていたのか?真実は何か?東日本壊滅の危機が近づく中、苦渋の決断を迫られる彼らが胸の内に秘めた思いとは?
豪華キャスト・スタッフ、日本映画最大級のスケールで贈る超大作。

まずは予告を観て欲しい。

当時のニュースでは官邸からの情報発信だけが頼り、福島第一原子力発電所で何が起きていたのか現場の情報はわからなかった。

当時の現場の様子はまさに戦場だったと当時の作業員の方がメディアのインタビューで過去に答えている。
予告編の様子でも現場が戦場と化している様子がうかがえる。

映画である以上、ヒーロー映画仕立てであることはこの際目を瞑ろう。

この映画の主人公、福島第一原発1・2号機当直長の伊崎利夫を演じるのは佐藤浩一である。
また、福島第1原子力発電所の所長の吉田昌郎を演じるのは渡辺謙。

2人ともカッコ良すぎます。

映画『Fukushima 50』あらすじ

予告編を観た上であらすじをご覧ください。

引用元:映画「Fukushima 50」公式サイト|大ヒット上映中!

マグニチュード9.0、最大震度7という巨大地震が起こした想定外の大津波が、福島第一原子力発電所(イチエフ)を襲う。
浸水により全電源を喪失したイチエフは、原子炉を冷やせない状況に陥った。
このままではメルトダウンにより想像を絶する被害をもたらす。
1・2号機当直長の伊崎ら現場作業員は、原発内に残り原子炉の制御に奔走する。
全体指揮を執る吉田所長は部下たちを鼓舞しながらも、状況を把握しきれていない本店や官邸からの指示に怒りをあらわにする。
しかし、現場の奮闘もむなしく事態は悪化の一途をたどり、近隣の人々は避難を余儀なくされてしまう。

官邸は、最悪の場合、被害範囲は東京を含む半径250㎞、その対象人口は約5,000万人にのぼると試算。
それは東日本の壊滅を意味していた。

残された方法は“ベント”。
いまだ世界で実施されたことのないこの手段は、作業員たちが体一つで原子炉内に突入し行う手作業。
外部と遮断され何の情報もない中、ついに作戦は始まった。
皆、避難所に残した家族を心配しながら―

映画『Fukushima 50』基本情報

  • 出演者
    • 佐藤浩市
    • 渡辺謙
    • 吉岡秀隆
    • 緒形直人
    • 火野正平
    • 平田満
    • 萩原聖人
    • 吉岡里帆
    • 斎藤工
    • 富田靖子
    • 佐野史郎
    • 安田成美
  • 原作 門田隆将
    • 「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」角川文庫
  • 監督 若松節朗
    • 代表的な映画作品「空母いぶき (2019)」「沈まぬ太陽(2009)」「ホワイトアウト(2000)」など
  • 製作代表 角川暦彦
  • 脚本 前川洋一
  • プロデューサー  椿 宣和
  • 撮影 江原祥二
  • 上映時間 122分
  • 著作権 (C)2020 「Fukushima 50」製作委員会

映画『Fukushima 50』メインキャスト

伊崎利夫 [佐藤浩市]

映画『Fukushima 50」より 佐藤浩一が演じる、福島第一原発1・2号機当直長の伊崎
映画『Fukushima 50」より
佐藤浩一が演じる、福島第一原発1・2号機当直長の伊崎
(C)2020 「Fukushima 50」製作委員会

福島第一原発1・2号機当直長

  • 佐藤 浩市
  • 生年月日 1960年12月10日
  • 出身 東京都
  • 主な映画出演作品
    • Fukushima 50 (2020) / 伊崎利夫 役
    • 空母いぶき(2019) / 垂水慶一郎 役
    • ザ・ファブル(2019) / ボス 役
    • 記憶にございません(2019) / 古郡 役
    • 64 ‒ロクヨン- 前編(2016) / 主演 三上義信 役 / 日本アカデミー賞 賞最優秀主演男優賞

前田拓実 [吉岡秀隆]

映画『Fukushima 50」より 吉岡秀隆が演じる、福島第一原発5・6号機当直長の前田
映画『Fukushima 50」より
吉岡秀隆が演じる、福島第一原発5・6号機当直長の前田
(C)2020 「Fukushima 50」製作委員会

5・6号機当直長

  • 吉岡 秀隆
  • 生年月日 1970年8月12日
  • 出身 埼玉県
  • 主な映画出演作品
    • Fukushima 50 (2020) / 前田拓実 役
    • 64 -ロクヨン- 前編・後編(2016) / 幸田一樹 役
    • ALWAYS 三丁目の夕日’64(2012)/ 主演 茶川竜之介 役
    • ALWAYS 続・三丁目の夕日(2007) / 主演 茶川竜之介 役 / 最優秀主演男優賞
    • ALWAYS 三丁目の夕日(2005) / 主演 茶川竜之介 役 / 最優秀主演男優賞
    • 男はつらいよシリーズ(1981 – 97年,2019年) – 諏訪満男 役 多数

吉田昌郎 [渡辺 謙]

映画『Fukushima 50」より 渡辺謙が演じる、福島第一原発所長の吉田昌郎
映画『Fukushima 50」より
渡辺謙が演じる、福島第一原発所長の吉田昌郎
(C)2020 「Fukushima 50」製作委員会

福島第一原発所長

  • 渡辺 謙
  • 生年月日 1959年10月21日
  • 出身地 新潟県
  • 主な映画出演作品
    • Fukushima 50 (2020) / 吉田昌郎 役
    • ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(2019) / 芹沢猪四郎博士 役
    • GODZILLA ゴジラ Godzilla(2014)/ 芹沢猪四郎博士 役
    • 沈まぬ太陽(2009) / 主演 恩地元 役 / 第33回日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞受賞

浅野真里 [安田成美]

映画『Fukushima 50」より 安田成美が演じる、発緊急時対策室総務班の浅野
映画『Fukushima 50」より
安田成美が演じる、発緊急時対策室総務班の浅野
(C)2020 「Fukushima 50」製作委員会

緊急時対策室総務班

  • 安田 成美
  • 生年月日 1966年11月28日
  • 出身地 東京都
  • 主な映画出演作品
    • Fukushima 50(2020) / 浅野真理 役
    • 任侠ヘルパー(2012) / 蔦井葉子 役
    • 最後の忠臣蔵(2010) / ゆう 役

映画『Fukushima 50』感想・レビュー

映画全編通して緊張が途切れないエンターテインメント作品だと思いました。

現場の人たちが文字通り自分の『命』をかけて、福島を、そして、日本を守ろうと頑張ってくれた熱い気持ちが伝わってきました。
こんなの見せられて涙が出ないわけがない。

中学1年の娘の希望で観てきましたが、彼女も何度も泣かされたと言っていました。

日本を元気にすることに役立つ映画だとも思うので多くの人に観て欲しい作品ですが、時期が時期だけに難しいかもしれません。
それだけが残念な映画でした。

もちろん、『命を危険にさらさない』で解決するべきだったし、『10mを超える想定外の津波』も想定できるようにしておくべきだったのでしょう。
しかし、『起きたこと』は変えられない。

その『起きたこと』に原発内で命をかけて戦いつづけた50人の作業員たちの物語が『Fukushima 50(海外メディアが呼んだ)』であり、彼らを非難するようなことはあってはいけない。賛美することがあっても。

政府の声と、現場の声

当時は民主党(現 立憲民主党)菅内閣の政府官邸からのニュースだけが頼りでした。
東京電力も当時は情報発信が遅く、隠蔽体質だと報道で罵られていたため良い印象は残っていません。

本編の中で、当時の総理大臣が思いつきで福島第一原子力発電所に視察にいくシーンが描かれます。
総理大臣が突然現場に訪れることで、ベント(格納炉内の圧力を下げる作業)が遅れるというシーンです。
しかし、事実は少し違います。
これは当時の東京電力本店が情報を隠蔽し、官邸に福島第一原子力発電所の事故情報を出さないため、痺れを切らした当時の菅総理大臣が現場入りした、というのが正確な事実です。

この映画『Fukushima 50』は東京電力の、しかも、福島第一原子力発電所にいた職員達のインタビューが元になった現場目線の物語です。
現場の人たちのことを知れたことは非常に良かったと思っています。

映画『太陽の蓋(2016年)』

監督:佐藤太、脚本:長谷川隆、上映時間:130分、VOD:YouTube 500円レンタルから

東日本大震災および、福島第一原子力発電所事故が発生した2011年3月11日からの5日間を映画化した政府官邸が舞台となるドキュメンタリー映画。
当時の政治家が実名で登場。

福島第一原子力発電所の事故に関連する映画。

福島第一原子力発電所の今

映画『Fukushima 50』は美談として終わらせているが、2020年3月現在、福島第一原子力発電所は廃炉への作業は進んでいない。

政府と東京電力は2041〜2050年までに廃炉を終えるという意見を過去に発表している。
しかし、1号炉、2号炉ともいまだに核燃料棒を1本も回収でいていない事実を踏まえると、2050年までに廃炉が完了するという計画は疑わざるをえない。
これは決して政府や東京電力を非難しているのではなく、いまだ放射線量が高く長時間いると死に至る被曝量があるため作業が進んでいないということである。
2041〜2050年までに廃炉を終えるならば、さらなる技術革新が必要であることを意味しているのかもしれない。
※日本に技術がなければ、海外から技術を受け入れる必要もあるが、これは外野が言っても始まらない。

なお、1号炉、3号炉、4号炉はベント(格納炉内の圧力を下げる作業)を当時おこなっており、格納炉は破損していない。ベント時は放射性物質は水の中で高い割合で排除されるため、大気汚染は控えめになる。
しかし、2号炉の格納炉は損傷(穴が開いている)していると言われており、放射性物質が排除されずそのまま大気中に撒き散らされてるという事実は忘れてはいけない。

そして、この現状は今もなお進行形であり、福島では故郷に帰れないでいる人が今でもいることも忘れてはいけません。

映画『Fukushima 50』まとめ

映画『Fukushima 50』は是非、日本人なら観ておくべき作品であろう。

しかし、映画を観終わって『凄かったね』『東京電力頑張ってくれてるね』『吉田所長カッコ良すぎます』と諸手を挙げて喜ぶだけの映画ではない。

エンターテインメント映画であるとは言え、過去に未曾有の危機に陥り、いまだに廃炉が完了していない『福島第一原子力発電所』が存在していることは事実である。

現在の日本を生きる日本人であれば、関心を寄せて学ぶ姿勢が必要である。

映画の情報を決して鵜呑みにするのではなく、自分の目で観て判断して欲しい。
映画のエピソードを全て事実情報として見てはいけないです。
あくまでエンターテインメント作品だということですから。

映画『Fukushima 50』という作品が今あります。

そして、NHKからは『原発メルトダウン 危機の88時間』というドキュメンタリー番組が発表されています。

『太陽の蓋』という映画も既に発表されています。

セミ・ドキュメンタリー映画としての側面がある作品ですが、自分の目で福島第一原子力発電所の今に関心を寄せてみてはどうでしょか(セミ・ドキュメンタリーは一番はじめに説明しましたが、私が作った造語です。フィクション6割、事実4割ぐらい)。

映画『Fukushima 50』は全てが収束したように見せていますが、先にも述べたように廃炉がまだ何も終わっていません。
原発内の50人の素晴らしい職員が日本を救ったという話が物語の本筋になっていますが、この物語の組み立て方は「特攻隊は国を守るために死んだ」と美化する手法と似ている。

また、事実が歪曲されているところも何点かあったこともこの記事の中で申し上げてきました。
製作側にとって都合の良い事実だけを上映し、不都合な事実を隠しているところは今年の日本アカデミー賞に輝いた『新聞記者』にも通じるところもあると感じました。

是非、映画『Fukushima 50』はいろいろな意味で話題作なだけに、見ずして批判や判断だけは下さないようにしてください。

以上、『映画『Fukushima 50』感想・レビュー(セミ・ドキュメンタリー映画だが、そのまま受け入れていいのか?)』でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。