映画『レ・ミゼラブル(2019)』暴力と権力が渦巻く現代のフランスが抱える闇に光を当てる

映画『レ・ミゼラブル(2019)』 クライム映画(犯罪映画)
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これから紹介する映画『レ・ミゼラブル(原題: Les miserables)』は2019年製作・公開されたフランス映画です。
本作の舞台となったフランスのモンフェルメイユ出身で今もなお在住している、ラジ・リが監督・脚本を担当しています。

ヴィクトル・ユゴーの名作『レ・ミゼラブル』の舞台となった街で今なお繰り返される悲劇(ミゼラブル)の連鎖を元に描きます。

この町では昔から移民と貧困、そして、権力とのぶつかり合いによる暴力が問題となってきました。その形は21世紀になった今も変わりません。

『レ・ミゼラブル』の原作を元とした19世紀のモンフェルメイユの悲劇は、過去になんどもミュージカル化、映画化、舞台化、ドラマ化が繰り返されている人気のテーマです。
今作の『レ・ミゼラブル』は現代のモンフェルメイユの暴力と権力のぶつかり合いの事実を元に描き切ったサスペンス・アクション映画として作成されました。

現代のフランスのパリ郊外、モンフェルメイユで生まれ育ち、今なお住み続けるラジ・リ監督。彼だからこそ、実体験を元にドキュメンタリ映画風に仕上げた話題作です。

レ・ミゼラブル 映画パンフレットより一部引用しました。

フランスでは2019年11月20日公開後、初日観客動員数が7万人を超え、週末興行収入ランキングは『アナと雪の女王2』に次いで第2位になる大ヒットスタートを飾りました。
その後も勢いは衰えず、公開17日目ではフランス国内の動員数が100万人を突破しました。
フランスのマクロン大統領も鑑賞し、「映画の舞台となった地域の生活条件を改善するためにアイデアを直ちに見つけて行動を起こす」ように求めたといいます。

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映画『レ・ミゼラブル』予告

YouTube: 東北新社 映画チャンネルより引用

?第72回 カンヌ国際映画祭 審査員賞受賞
?本年度 アカデミー賞 国際長編映画賞 ノミネート
?本年度 ゴールデン・グローブ賞 外国語映画賞 ノミネート
?新鋭ラジ・リ監督が現代社会の闇をリアルに描く衝撃の問題作?

2月28日(金)より新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

映画『レ・ミゼラブル』あらすじ

引用元:映画「レ・ミゼラブル」公式サイト 2020年2/28公開より

パリ郊外に位置するモンフェルメイユ。

ヴィクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」の舞台でもあるこの街は、いまや移民や低所得者が多く住む危険な犯罪地域と化していた。

犯罪防止班に新しく加わることになった警官のステファンは、仲間と共にパトロールをするうちに、複数のグループ同士が緊張関係にあることを察知する。

そんなある日、イッサという名の少年が引き起こした些細な出来事が大きな騒動へと発展。

事件解決へと奮闘するステファンたちだが、事態は取り返しのつかない方向へと進み始めることに……。

  • 原題: Les miserables
  • 監督: Ladj Ly(ラジ・リ)
  • 脚本
    • ラジ・リ
    • ジョルダーノ・ジェデルリーニ
    • アレクシス・マネンティ
  • 音楽: ピンク・ノイズ
  • 撮影: ジュリアン・プパール
  • 美術: カリム・ラガティ
  • 衣装: マリーヌ・ガリアーノ
  • 編集: フローラ・ヴォルプリエール
  • 公開: 2019年
  • 製作国: フランス
  • 上映時間: 104分
  • 著作権: © 2019 SRAB FILMS LYLY FILMS RECTANGLE PRODUCTIONS

映画『レ・ミゼラブル』感想・レビュー

映画『レ・ミゼラブル(2019年版)』の感想を簡単に表現するなら「不正義の連鎖の中、緊張の糸がずっと張りつめる、洗練された上質なアクション映画」となる作品です。

地元に根付く古株警官の横暴さ、それを黙認する警察署長、スラムに根付く複数の実力者の派閥の駆け引きなど、これが現実かと疑うほど胸糞が悪くなるような事実が地域に蔓延っている。

犯罪は生活の一部となっている、それが当たり前の町モンフェルメイユ。

国家権力である警察、スラム街の実力者たちのパワーバランスの駆け引きの様子が観客を不安にさせます。

新人警官ポマード(ダミアン・ボナール)の視点を借りて、観客は21世紀の今でも続くモンフェルメイユの悲劇を目の当たりにしていくことになります。

モンフェルメイユのリアルな社会の中で大人も子どもも生活している。
警察が追っていたスラムに住む子どもが怪我をして、事態は一転、一触即発の事態になります。
しかも、特にラストの暴動シーンはその後の展開が全く予想しない方向へ発展していきます。
どうしてこうなってしまったのか!

そして、映画のラストは衝撃的で、言葉では表せないエンディングを迎えます。

フランスが抱える移民問題、低所得者層の地域の問題、警察の不義の問題、ラジ・リ監督自身がフランス系移民の2世で現地に住み続けているからこそ描けるリアリティ。

映画を観る価値観が新しくなる経験がそこにはあるかもしれません。

映画『レ・ミゼラブル』キャストを振り返る

新人警官 ステファン(ポマード)/ ダミアン・ボナール

映画『レ・ミゼラブル』より ダミアン・ボナール が演じる、ポマード

映画『レ・ミゼラブル』より
ダミアン・ボナール が演じる、ポマード
© 2019 SRAB FILMS LYLY FILMS RECTANGLE PRODUCTIONS

地方から移動してきた警官のステファンは犯罪対策班に配属される。
班長警官クリスたちの横暴なやり方に戸惑いながらも、不器用でも“正直であろう”ともがく様がなんとも言えない。

  • Damien Bonnard(ダミアン・ボナール)
  • 生年月日 1978年7月22日
  • 出生地 フランス・アレス
  • 主な映画出演作品
    • Les Misérables(レ・ミゼラブル・2019) / 主演 ステファン(ポマード) 役 / セザール賞主演男優賞ノミネート
    • Seules les bêtes(動物だけが知っている・2019) / ジョゼフ 役 / 第32回東京国際映画祭にて公開
    • Rester vertical(垂直のまま・2016) / レオ 役 / リュミエール賞 最優秀新人男優賞

班長 クリス / アレクシス・マネンティ

映画『レ・ミゼラブル(2019)』より アレクシス・マネンティが演じる、クリス

映画『レ・ミゼラブル(2019)』より
アレクシス・マネンティが演じる、クリス
© 2019 SRAB FILMS LYLY FILMS RECTANGLE PRODUCTIONS

ステファンが配属された犯罪対策班の班長のクリス。
彼は「地元の市民から尊敬されている」と嘯(うそぶ)くが、ステファンの目からクリスたちは単に国家権力を笠に着る横暴警官として恐れられているようにしか見えない。

クリスは自分たちの流儀をステファンに学ばせようとするが・・・

  • Alexis Manenti(アレクシス・マネンティ)
  • 生年月日  1982年2月12日
  • 出身地 フランス・パリ
  • 主な映画出演作品
    • Les Misérables(レ・ミゼラブル・2019) / クリス 役 / リュミエール賞新人男優賞・脚本賞にノミネート

グワダ / ジェブリル・ゾンガ

映画『レ・ミゼラブル(2019)』より右: ジェブリル・ゾンガが演じる、グワダ

映画『レ・ミゼラブル(2019)』より
右:ジェブリル・ゾンガが演じる、グワダ
© 2019 SRAB FILMS LYLY FILMS RECTANGLE PRODUCTIONS

犯罪対策班のメンバーであるグワダ。
クリスのやり方が自分たちのやり方であり、正義であると疑うことをしらない。

  • Djebril Zonga(ジェブリル・ゾンガ)
  • 生年月日 1981年10月7日
  • 出身地 フランス・パリ
  • 主な映画出演作品
    • Les Misérables(レ・ミゼラブル・2019) / グワダ 役

『レ・ミゼラブル』原作との関連性は

結論からいうと関連性は舞台が同じ町、不正義が今でも続いているということです。

原作ではパンをわずか1本盗み、19年間も投獄された男の生涯の物語ですが、映画は警官の視点で描かれる人間の業の物語です。
テーマや舞台は同じですが、別の作品として考えて大丈夫です。

原作と映画で共通している物があるとすれば2つです。

それは「環境(社会)が人間を作り上げる」ということと「レ・ミゼラブル」というタイトルが同じということです。

なお、原題の Les Misérables には、「悲惨な人々」「哀れな人々」という意味があります。

映画『レ・ミゼラブル』まとめ

『アクション映画』というジャンルに一括りにするともったいないぐらい、洗練された上質な映画でした。

ハリウッド映画で代表されるような『ただただ、ド派手にアクションをおこない、有名な俳優で固める』的なアクション映画ではない。

これは現実を模して再構築された、フランスのパリ郊外にあるモンフェルメイユの緊迫した現実を映像化しています。
原作はないが、ラジ・リ監督が住み続けたモンフェルメイユの町を見続けてきた姿がそこに描かれている。良質な小説も描けそうなぐらい脚本がしっかりもしていました。

では、モンフェルメイユが今でも抱える現実(問題)とは何か?

それは犯罪が生活に根付いていることです。
子どもですら息をするように犯罪を犯す。
それは生きる糧のためあったり、ただの娯楽でもある場合など様々でした。

子どもだけでなく、大人たちもモンフェルメイユの町が抱える閉塞感に犯されています。
そして、市民たちは警官を自分たちの敵として捉えているのです。
市民たちは自分たちの縄張りや利益を守るためには警官にも牙を向く、そんなリアルがパリのすぐ近くの郊外にあるという現実がこの映画『レ・ミゼラブル(2019)』では描かれています。

ド派手なアクション映画を期待する人には勧めませんが、良質なサスペンスとアクションを備えた、じっくり何度でも観たくなる映画でした。

以上、「映画『レ・ミゼラブル(2020)』暴力と権力が渦巻く現代のフランスが抱える闇に光を当てる」でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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